世界史

シェイクスピアの本拠地 「グローブ座」とは?始まりとその歴史

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古今東西、劇作家としての名声をほしいままとしている、イギリスが生んだ天才ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)。そのシェイクスピアが生きていた時代、彼の劇がどのような場所で、どのように演出されていたかご存知でしょうか。シェイクスピアが生前、自作の劇を上演し喝采を浴びたパブリック・シアター、「グローブ座」について紹介します。

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グローブ座ができるまで

ヨーロッパの劇のはじまりは宗教劇でした。
教会で説法される聖書のエピソード、たとえばピラトの処刑のシーン、イエスの復活のシーンを劇の形式で公演したのです。しだいに劇の規模が大きくなると、劇は教会の外で催されるようになります。芸人を務めたのはプロの劇団ではなく、当時多数存在した職人グループが分担しました。  イギリスでは、移動式の劇場「ペイジェント」(山車)が盛んとなり、劇は町なかで公演されるようになります。市民の娯楽となった劇は、しだいにその内容の宗教性が薄れて世俗化していきました。こうした動きのなかで、それまで役者を務めていた素人に代わって旅芸人が出現します。旅芸人は、より集まって一座をつくり、各地を転々としながらレパートリーを披露することで生計を立てました。ちなみに時代的には後ろになりますが、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』は、シェイクスピアの劇を上演しながら旅をする主人公の成長を描いた教養小説(ビルドゥングスロマン)です。
 こうした旅芸人の一座が集う場所であったのがロンドンでした。演劇の盛んであったこの地に、レスター伯一座の芸人であったジェイムズ・バーベッジは1576年、常設の民衆劇場「シアター」を建設します。この劇場はジェイムズの死後、1598年に取り壊されてしまうのですが、翌年ジェイムズの息子たちによって、劇場の激戦区テムズ河南岸に「グローブ座」として再建されます。このグローブ座がまもなくシェイクスピアの本拠地となり、数多くの傑作を上演していくことになる劇場です。

グローブ座の様子

グローブ座とはどのような劇場だったのでしょうか。
まずは外観から見てみましょう。テムズ河の南岸に建てられたグローブ座は、周囲にロンドン橋や、ライバルであるローズ座をひかえ、劇場の形は円形に近い多角形(20角形)という趣でした。屋根は茅葺きでした。

 グローブ座の内装は、いわゆる「張り出し舞台」と平土間の立ち見客席、観客が押し寄せる桟敷からなり、劇場には意匠を凝らした柱が聳え立っていました。舞台は外舞台、内舞台、二階舞台の3層構造になっていて、天井には空を模した天体図が描かれていたようです。なお『ロミオとジュリエット』の有名なシーンでは、二階舞台のバルコニーが使われます。このようにグローブ座は現在のように客席と劇場が幕で分離した構造ではなかったため、シェイクスピア時代には、観衆と劇団の間に強い一体感があったことが伺えます。また、幕を下ろすことができなかったため、場面の転換に制約があったことも想像できます。こうした「張り出し舞台」というグローブ座の構造は、シェイクスピアの作品に反映されていると考えられるでしょう。客席には、追加料金を払うことで、今でいうボックス席や舞台に近いVIP席にグレードアップすることも可能だったようです。収容人数はおよそ2000人でした。

 劇場には一部を除いて屋根がなかったため、雨の日には劇は上演されませんでした。そのため、その日に劇が上演されることを示すために、劇場の上に旗を立てていたそうです。ロンドンの町民はこの旗を見てグローブ座に押しかけたのです。3回のトランペットの演奏が劇の開幕を告げ、2~3時間の劇が終わると、最後にジグjigと呼ばれるダンスで上演はお開きです。

 このグローブ座において『ハムレット』や『オセロー』、『リア王』などが演じられました。シェイクスピアが所属していた劇団は、ジェイムズ・バーベッジの息子リチャードなどの成人男性のほか、子役がいました。当時は女優が存在しなかったため、代わりに男の子役が演じた、というわけです。
このようにシェイクスピアが活躍したグローブ座ですが、1613年に『ヘンリー8世』において祝砲を発したところ、茅葺き屋根に引火し、全焼してしまいます。
翌年には再建されますが、1640年代のピューリタン革命で、娯楽施設であった劇場は次から次へと閉鎖され、1644年、ついに取り壊されてしまいました。

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グローブ座の再建と東京グローブ座

こうして憂き目を見たグローブ座でしたが、1988年、遠く海を隔てた東京、新宿区百人町に「東京グローブ座」として復活します。
さらに本場ロンドンでも宿願であったグローブ座再建を1997年に果たしました。ロンドンのグローブ座は、シェイクスピア時代のグローブ座を再現するため、ロンドンでは例外的に屋根を茅葺きにすることを許可されています。

一度はなくなってしまったグローブ座でしたが、幸運なことに今こうして東京・ロンドンの新しいグローブ座で、私たちはシェイクスピアの劇を観ることができるのです。

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