そば

9000年の歴史!?麺類大国、日本の蕎麦の歴史と、その魅力

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日本の「蕎麦文化」

 世界各地には、様々な素材を原料とする「麺」があります。その多くは小麦粉や蕎麦粉、米粉といった穀類の粉やデンプンなどの素材に水と塩を加えて練り上げた生地を加工したもので、一部を除いて大半が細長く伸ばして食べやすくしてあります。さらに、麺を調理した「麺料理」となると、そのバリエーションは星の数程あり、地域ごとに様々な“麺文化”が存在します。  特に、ここ日本は、世界の代表的な麺料理のほとんどが楽しめる独自の麺文化が発達し、世界有数の麺類愛好国と言っても過言ではないでしょう。日本独自の蕎麦、うどん、そうめん、冷麦といった“和麺”に加えて、中華料理の範疇から今や日本の国民食と言っても過言ではないラーメンやイタリアのパスタ(スパゲティ)、韓国の冷麺などが人気です。そんな麺類の中でも「蕎麦」は、和麺の代表として古来から多くの麺好きを魅了し、“蕎麦通”と呼ばれるマニアを生んできました。  立ち食いも含め、大抵のお蕎麦屋さんにあるのが、もり蕎麦・ざる蕎麦、かけ蕎麦。“蕎麦御三家”とも言うべき定番の蕎麦メニューですが、手打ち蕎麦を食べさせる本格的なお店では、さらに蕎麦がきや蕎麦もちといった“通”好みの蕎麦料理が楽しめます。こうした蕎麦料理に舌鼓を打ちつつ、さらに蕎麦の歴史や日本各地の多種多様な蕎麦料理を探っていくと、そこには「蕎麦文化」とも言うべき日本独自の麺文化を見いだすことができるのです。

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日本の“粋”に触れる蕎麦の旅

“通”を虜にする蕎麦の魅力。それは、蕎麦の香り・歯触り・喉越し、そして入念な仕事で仕上げられた蕎麦汁のハーモニーが醸し出す至福の味わいに尽きるでしょう。また、蕎麦の麺と汁は地方ごとに異なり、薬味や食べ方も種々様々。そんな各地の蕎麦を巡る旅もまた“蕎麦通”の楽しみです。

蕎麦を通じて触れる、“粋”な風情。蕎麦の魅力を探訪し、その背景にある風情を楽しむ…。そんな「蕎麦の旅」へ皆様をお連れしたいと思います。

ソバの実の歴史と栄養価

蕎麦の原料は、穀類のソバの実。
一般的に、この実の殻を除いて(更級蕎麦)、実の中に含まれている粉を材料に蕎麦そばを作ります。ソバの実は、ビタミンB群やルチンなどを多く含み、近年の健康食ブームなどにより、食の健康や安全性に対する関心が高まり、蕎麦の持つ栄養価が注目されています。

ソバはタデ科の1年生植物で、種まきから収穫まで2~3カ月と短く、痩せた土地でも育ちます。 
日本でソバの栽培が始まったのは、縄文時代と言われています。高知県で9000年以上前の遺跡から“蕎麦”の花粉が見つかり、当時から“蕎麦”が栽培されていたと考えられているからです。また、『続日本紀』(797年)には、奈良時代前期の女帝・元正天皇(680~748)の詔中に蕎麦についての記述があり、これは現在までのところ日本の歴史的文献に記された最も古い蕎麦に関する記述とされています。

“和麺”を代表する不動の地位を確立している蕎麦ですが、そのルーツをたどれば、実はもともと大陸から伝わったものと言われています。さらに、その原料となるソバの原産地については、古くはバイカル湖南部付近という説から黒滝江上流説、ネパール説、プータン説など諸説ありますが、現在は中国南部という説が有力です。

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元祖・蕎麦は麺ではなく、お餅状?

蕎麦は、「中華そば」と区別するため「日本そば」と表記されることもありますが、小麦粉を練って細長く“伸ばす”中華そばに対して、蕎麦は麺を包丁で細長く“切って”作ることから「蕎麦切り」とも呼ばれています。また、古代日本語では、「そばむぎ」とか「くろむぎ」と呼んでいたそうです。もともと蕎麦は私たちが食べている細長いものではなく、そば粉をお湯で練って餅状にして食べるものでした。つまり、前述の蕎麦がきや蕎麦もちが、蕎麦の元来の姿だったのです。

新蕎麦の季節

一年の中で蕎麦が一番美味しいのは、蕎麦屋の店先に「新蕎麦、入荷しました」という張り紙が張り出される季節。新蕎麦には、種を春にまいて夏に収穫する夏蕎麦と、夏にまいて秋に収穫する秋蕎麦があり、それぞれ夏新、秋新とも呼ばれています。
夏新は、秋に収穫するものよりも成長機関が短く、味・香り・色が落ちるため、こだわりの蕎麦通の間では敬遠され、一般的に新蕎麦というと秋新の方を指します。
10月末頃から出回る秋新は、麺が全体的に緑がかっていて香りも強く、蕎麦通は毎年秋になると、この味覚を求めて吸い寄せられるように蕎麦屋に向かいます。味覚の秋にピッタリの10月下旬から11月上旬頃に出回る秋新は、“通”ならずとも味わってみたい秋の味覚の逸品です。

ちなみに、蕎麦通の中には、新蕎麦の香りを損ねると、薬味のネギなどを入れずに蕎麦汁だけで食したり、無味無臭の水や塩で新蕎麦を楽しむ硬派もいるとか。水と塩で味わう新蕎麦…。
美味しい新蕎麦に出会ったら、試してみたいですね。

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あなたは、薮派? 更科派? それとも田舎派?

蕎麦は、蕎麦粉の種類(挽き方)により、大きく分けて、更科系蕎麦、薮系蕎麦、そして田舎蕎麦の3種類に分類されます。

まず、更科系の蕎麦は、ソバの実を挽いて一番最初に出てくる一番粉を使い、麺が白いのが外観上の特長。ソバの実は挽くと実の中心部の胚乳から挽かれて出てくるため、一番粉には殻の部分が含まれません。
後から出てくる二番粉に比べて香りは少ないものの、口当たりが上品に仕上がることから高級品とされています。一番粉は、ほとんどがでんぷん質のため粘りが弱く、打つときはお湯、つなぎに小麦粉などを使います。その製法は二番粉以降の粉を使う薮系や田舎蕎麦に比べて難しいそうです。また、更科の蕎麦粉は、殻も挽く二番粉のような独特の強い香りが無いため、茶そばや鯛そばといった他の素材を練り込んで作る「変わり蕎麦」にも適しています。

二番粉を使う藪系の蕎麦は、抜き実の挽きぐるみ、つまり緑色の甘皮部分も挽き込むため、全体的に緑っぽい色の蕎麦に仕上がります。蕎麦本来の香りも強く、蕎麦通には、この薮系のファンが多いようです。

最後の田舎蕎麦は、蕎麦殻を挽き込んだ黒っぽい蕎麦粉で作られた野趣あふれる蕎麦。つなぎには、山芋などが伝われ、長野県や愛知県、近畿、その他の山村でよく食べられます。薮系以上に香りが強く、蕎麦汁をあまりつけないで食べることが一般的とされています。

さぁ、あなたの好みは、どのタイプ?

蕎麦汁のこだわり

蕎麦に欠かせない蕎麦汁は、地域によって色や濃さ・味などに違いがあり、製法も成分も各地によって異なります。また、香りの強い薮系蕎麦と田舎蕎麦には濃い味付けの蕎麦汁、一番粉を使った上品な更科系蕎麦には薄めの蕎麦汁がそれぞれ合うとされています。

蕎麦屋の蕎麦汁は、「かえし」と「だし」を合わせて作る、いわばプロ仕様。かえしは醤油と砂糖、みりんから作りますが、醤油を加熱する「本がえし」と加熱しない「生がえし」があります。鰹節からだしを引きますが、もりつゆ(辛汁)とかけつゆ(甘汁)で、その製法が異なります。

具体的な作り方については、蕎麦通の方や醤油製造元のホームベージなどに詳しく紹介されているので、ここでは割愛させていただきますが、良い蕎麦汁については定番の基準があるといわれています。それは、「蕎麦湯で割って飲んだ時に、甘さ・辛さのバランスが崩れず、且つ鰹節や醤油の味が出しゃばらないこと」。蕎麦を食べた後、残った蕎麦汁を蕎麦湯で割って飲む時、このことを思い浮かべてみてください。さて、この店の蕎麦汁の出来は…?

世界のソバ料理

日本蕎麦と同じように、海外にもソバの実を使う料理があります。蕎麦と同じように細長い麺状にしたものでは、イタリア最北部ヴァルテッリーナの郷土料理として知られる日本のきしめんに似たピッツォッケリがありますが、同国の代表的な料理パスタにもソバ粉で作られたものがあり、ヘルシーフードとして健康志向のパスタ・グルメの間で人気です。また、韓国の冷麺や中国の??(ヘイロ)は、丸い穴をあけた機械からところてんのように押しだして細長い麺を作り、それを茹でていだきます。

さらに、それらとは全く製法と形状が異なるものの同じくソバを原料とする料理では、そば粉の生地でチーズを包んで揚げたイタリア料理のシャット、ロシアやウクライナ・東欧で食べられているソバの実を粥状にしたカーシャ、ソバの実を炒ってオーブンで焼いたスロベニアのおじや料理クラクフカーシャ、蕎麦がきに似たネパールのディロなどがありますが、これらの料理は日本でお目にかかる機会が少ないと思います。日本人にも比較的知られている海外ソバ料理では、フランスで庶民料理として親しまれているガレットが挙げられます。要するにこれは、ソバの実を挽いて粉にしたものを材料に焼いたクレープです。

ヘルシーフード 蕎麦のチカラ

動脈硬化や老人性痴呆症、脳梗塞、リウマチ性疾患、心筋梗塞、痛風、糖尿病、そして癌といった疾患を引き起こす原因とされる活性酸素。蕎麦には、その活性酸素を無毒化する抗酸化剤としての役割を果たすポリフェノールのひとつであるルチンが含まれていることで、生活習慣病の予防に注目されています。

そんなルチンの効果として特に有効であるとして注目されているのが、毛細血管の強化作用と血圧降下作用。高齢者を悩ます諸症状に作用することは、蕎麦を常用食としている地域の平均寿命が高いというデータからも察する事ができるでしょう。

ちなみに、ルチンは水に解けやすい性質のため、ほとんどが蕎麦を茹でたそば湯に溶け出してしまうので、そば湯も飲むことが重要です。
ただし、乾麺の蕎麦の場合、100g中に2~3gの塩分が含まれ、そのうちの80%~85%の塩分が茹で汁に溶けて流れ出てしまうために、100gあたりのそば湯の中には1.6g~2.5gの塩分が含まれている点に留意した上で、そば湯を飲まれることをおすすめします。さらに、塩分は蕎麦汁にもかなり含まれているので、くれぐれも塩分を考慮に入れて、蕎麦の締めをお楽しみいただきたいと思います。

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