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俵屋宗達の凄すぎる絵の力は近代絵画に深い繋がりを持たせている

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風神雷神図屏風」国宝

俵屋宗達と言えば「風神雷神図屏風」が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?「風神雷神図屏風」を始め宗達の絵は、その中で動き出すのではないかと思わせるほどの力があります。宗達の残した功績は、今なお近代絵画に大きな影響を与えて続けています。そこで、宗達の絵の力を詳しくご紹介していきます。

    俵屋宗達の動き出す絵の秘密に迫る

    「鶴下絵和歌巻」京都国立博物館
    この作品は書を本阿弥光悦、絵を俵屋宗達が手がけたものです。飛翔する鶴の群れ、地上から天空に向けて飛び立つ千羽鶴の群れは、羽、胴に銀泥にうっすら金泥を用いていることで、柔らかく温かみを感じさせるものになっています。
    宗達の絵に本阿弥光悦の三十六歌仙の和歌が書かれています。この絵に躍動感を感じさせるのは、宗達の動きの技法が表現されているからです。まず、絵巻物には、右から左へと時間の流れが作られるように描かれるのが約束事です。宗達はこの約束事を利用し、鶴の時間経過が分かるように描いています。

    水岸に遊ぶ鶴が頭をゆっくり下へ傾げているところから始まり、次に画面上の方から舞い降りてきた鶴が上空を旋回したかと思うと、再び舞い降りて今度は波間ギリギリの所を飛び、波に飲み込まれてしまったかと思わせながら、勢い良くまた上空へ飛び立っているのが前半部分です。

    後半は、時間軸に逆らい岸辺に戻ってくる鶴の群れがあります。常に鶴の群れが個別に描かれるのではなく同じ時間を示すように描かれています。それなのに、鶴一羽ごとに動きがあり、躍動感を感じさせます。

    今で言うアニメの動きを一枚の絵で見ているような気にさせられるのがこの絵の魅力でもあり、宗達の技量が見られるものでもあります。この絵には、冒頭でも紹介した通り光悦が文字入れを行っています。

    この壮大な絵に圧巻されていたのか光悦は、和歌の作者である「柿本人麿」と書かなければいけないところを「柿本麿」と「人」の字を書き忘れてしまっています。また、三十六歌仙の和歌三十六首と書く所を後から小さく書き入れています。おそらく書き忘れたことに気づき後から書き足したのだと言われています。

    光悦がそれだけ緊張し、筆入れをするくらいこの絵に力があったのかもしれません。この絵も迫力があることながら光悦の書には、風格を感じさせる美しい文字がさらにこの絵を引き立たせています。

    この作品は後に俵屋宗達と本阿弥光悦の合作として「最高の作品」と言われ、重要文化財に指定されています。

    宗達のキャラクターから動きを見出す

    「蓮池水禽図」国宝

    宗達が桃山時代終わり頃から江戸時代初期にかけて描いた代表的な作品が「蓮池水禽図」です。ここに出てくる二羽のカイツブリを見比べて分かるように二羽の動線がはっきり違って見えます。

    右手手前の一羽は悠然と移動しているのに対し、もう一羽は、手前の一羽を追い抜きバシャバシャと音を立てて、ワァワァ騒ぎながら斜め上に進んでいくように見えます。このスピード感の違いやカイツブリの表情が見えてくるような描写は、宗達ならではの技法です。

    「関家澪標図屏風」静嘉堂文庫美術館蔵

    他にもキャラクターがあたかもそこで動いて見える描き方をしているものに「関家澪標図屏風」があります。住吉参詣の光源氏一行と光源氏の子供を出産した明石の君の一行がはちあわせしそうになっている場面です。

    明石の君と光源氏は公式の場で会うことが許されない間柄であるため今まさに緊迫した状況を、牛車の前に立つ束帯の姿の人物や従者たち総勢50人もの人物の様子で描かれています。

    その表情も様々で驚く人、内緒話をしている人達、ざわめき立つ人達がいます。それに対し車から姿を一切現さない光源氏が表現されています。宗達の絵にはこうした今まさにそこで動いているのではないかと思わせるほどの描写があるのが大きな魅力です。

    俵屋宗達が近代絵画に深い繋がりを持たせている理由

    「犬図(狗子図)」

    こうした宗達の魅力に大きな影響を受けた尾形光琳が「琳派」を作ったことは有名ですが、それ以降も宗達の影響を受けた画家が多くいます。

    たとえば、宗達の「犬図(狗子図)」は、画面中央に地面を嗅ぐような愛らしい子犬の姿が描かれています。この絵は、体が重なる耳や足を白く塗り残す「彫り塗り」という技法が用いられており、背中から胴にかけて膿墨がお腹あたりでにじみを作り止まっています。

    そこから濃い墨から淡い墨へと複雑な「たらし込み」技法の変化がわかる重厚な技が光り、ふくよかな立体感や犬の毛のふわふわした感触が想像できる作品です。
    「狗」小林古径

    この絵を大正時代から昭和初期に活躍した画家の小林古径が宗達の「たらし込み」技法を取り入れいくつか絵を描いています。「狗」もそのひとつです。その他でも今村紫紅や速水御舟などが宗達に影響をされていると言われています。
    風神雷神」今村紫紅

    明治の画家今村紫紅の「風神雷神」も宗達の「風神雷神図屏風」から影響を受けた作品で、宗達とはまた違いコミカルに描かれているのが特徴です。
    「翠苔緑芝」

    大正時代から昭和初期に活躍した速水御舟は、尊敬する先輩画家の今村紫紅の影響で宗達を意識し独自の技法を作り出しました。その後、「炎舞」重要文化財にもなっている傑作を生み出しています。
    「炎舞」重要文化財

    時代を経ても、多くの画家達に影響を与え続けた宗達の絵は、今なおたくさんの人達に親しまれています。

    現在へと「琳派」の継承は続く

    「琳派」の流れは多くの日本画家たちに引き継がれていきます。宗達に大きな関心を抱いていた今村紫紅は、「風神雷神図屏風」を南画風に仕上げていきます。紫紅の「風神雷神図屏風」は、「琳派」の継承を象徴する主題として知られています。
    「落葉」菱田春草 6曲1双 重要文化財 永青文庫蔵

    「燕子花図」尾形光琳 国宝 根津美術館蔵

    「琳派」を継承する画家の中には菱田春草もいます。春草の「落葉」は尾形光琳の「燕子花図」に繋がる表現方法を巧みに使った美しい作品としても有名です。
    「紫苑紅蜀葵」小林古径 6曲1双 霊友会 妙一コレクション蔵
    「玉柏」平福百穂 6曲1双 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

    緻密な彩色、細い描線、たらし込み技法を用いて描かれた小林古径の「紫苑紅蜀葵」もまた「琳派」を大きく意識して描かれた作品です。「琳派」特有のたらし込み技法を用いて描く画家は多く存在します。平福百穂もそのひとりです。

    百歩の代表的作品「玉柏」には、宗達の「蔦の細道図」を思わせるたらし込み技法があり「琳派」を大きく意識して描かれた美しい絵と言われています。
    「翠苔緑芝」速水御舟 4曲1双 山種美術館蔵
    「新樹の曲」川端龍子 6曲1双 東京国立近代美術館蔵

    また、「琳派」の明快な彩色の流れを組んでいるのが速水御舟の「翠苔緑芝」や川端龍子の「新樹の曲」などが「琳派」的な造形に繋がる絵として有名です。
    「美しい旗」金田誠(下)2曲1双 高橋コレクション 「風神雷神図屏風」俵屋宗達(上)
    「JAPAN」ポスター 田中一光 (社)日本グラフィックデザイナー協会蔵
    平家納経願文見返し「鹿園」俵屋宗達 厳島神社蔵

    そして、1995年金田誠の描く「美しい旗」では、「風神雷神図屏風」「紅白梅図屏風」を引き継いだ現代美術の「琳派」を象徴する名作と言われている作品です。工芸デザインでは、田中一光が平家納経願文見返し「鹿園」をモチーフにデザインし現代に蘇らせています。

    このように「琳派」は、家系ではなく様々な画家によって継承されつづけている絵の流派とも言える存在のようです。「琳派」は、継承と新しい発見を繰り返し日本美術史に残され続けていく流派と言っても良いものかもしれません。ぜひ、「琳派」の美しい絵の世界を楽しんでみて下さい。


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