日本画

喜多川歌麿の描く色気満載の女性 浮世絵の数々を見る

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「霞織娘雛形」シカゴ美術館

喜多川歌麿と聞くと色気のある女性像が思い浮かんだり、浮世絵の印象が強かったりしませんか?現在でも「うたまろ」は、よく聞くフレーズになっています。実際、歌麿の絵には「霞織娘雛形」のような蚊帳の内外に首筋の美しさを強調した女性の半身像などがあります。

浮世絵版画の特徴とも言える縦線と横線の二枚の板木を利用して蚊帳を透かして描写する手法を活かし、人物の距離感、立体感を巧みに操ることが出来るのが歌麿と言われています。ここから、歌麿の描く色気のある女性を中心に詳しくご紹介していきます。

    喜多川歌麿女性の心境を描き出す

    「婦人相学十躰・浮気之相」東京国立博物館

    歌麿の大首絵が最高に素晴らしいと思わせる作品が「婦人相学十躰・浮気之相」と言われています。薄うぐいす地に藍の模様を散らした単衣に黒の芭蕉模様、黄色の帯を締めた湯帰りの女性がふり返った構図です。

    顔の輪郭と着物や帯の描線に太さの変化があります。背景の部分や袖口の部分の線を太くすることで描線の効果をより際立たせているそうです。また、背景に雲母(キラ)と膠を混ぜて紙にのせていることで美人を引き立てる効果を出しているようです。

    歌麿が女性の心理状態を描き写そうとする努力の現れが見える作品としても名高く、歌麿独自の女性を人相見した言葉が書き込まれた副題が、この絵をまた魅力的なものにしています。
    「歌仙恋之部・物思恋」リッカー美術館

    雲母摺りの背景に鼠色の着物、紫の襦袢、黒地に黄色の格子模様の胴着の色彩色が印象的な「歌仙恋之部・物思恋」は、顔と衣服の線の太さを変え、描線が美しく生かされる工夫がなされているので、見る人の目を楽しませる絵です。
    細めた目と固く結んだ口元、右手で頬杖をついて物思いにふける女性の姿が恋に悩んでいる心理を見事にとらえている歌麿の最高傑作と言われています。
    「歌撰恋之部・深く忍恋」東京国立博物館

    万葉集をはじめ和歌集の恋之部になぞった女性をモデルに描かれています。「歌撰恋之部・深く忍恋」も髪がピンと横に張った「とうろうびん」と言われる髪形が、典型的な町人の女房をあらわしているそうです。

    わずかに開かれた口元からお歯黒がチラリとみえています。このお歯黒には化粧や虫歯予防といった目的もあったようですが、この時代、お歯黒をした女性は、既婚者のしるしとされていて、「貞女二夫にまみえず」(夫が死んでも再婚することはない)との誓いの意味があったようです。

    赤い羅宇の煙管を手に持ち、細めた目が女性の恋に悩む姿を連想させるとして、歌麿の作画力もさることながら、彫師の髪の生え際の細部まで美しく手がけていることでもこの絵は評価が高いようです。
    「歌撰恋之部・あらはるる恋」
    「歌撰恋之部・夜毎に逢恋」

    「歌撰恋之部」のシリーズは、平安期の和歌集の恋歌から恋に悩む女性の心理描写を描く絵のシリーズとしても知られています。外見の美しさと内面からの出て来る美しさをみごとに表現出来るのは歌麿だからこそなせる技です。

    徳川幕府の禁止令を逆手に取る喜多川歌麿の絵

    「鮑取り」東京国立博物館

    女性の体の線を朱線にすることにより、健康的な肉体美を表現しています。徳川幕府の浮世絵に対する法令は厳しいままだったため、版元や絵師達は幕府の目を逆手にとることを考えました。「鮑取り」もそのひとつで、幕府の禁止令に触れないように中央に子供と母の絵を描くことで母性愛を強調しようとしています。
    「針仕事」東京国立博物館

    徳川幕府を意識して描かれていると思われるのは「針仕事」も同じです。針仕事をする女性を中心に一般家庭の情景を描き出した作品ですが、胸がはだけた女性が着付けを行ったり立膝した女性の足があらわになっていたりします。

    風俗を意識した女性美を描こうとしながらも、幕府の目を逆手に取ることを意識しすぎて、肝心の絵の趣が違ったものになってしまっているようです。しかし、女性の前の少年に対し虫かごをもつ女性を後方に配置することで距離感をあらわそうとした構図は歌麿ならではの画力の素晴らしさと言えるようです。
    「山姥と金太郎・盃」東京国立博物館

    山姥は山の娼婦のことで、その山姥に育てられたのが金太郎、後の源頼光(四天王の1人)、坂田金時として「向かうところに敵なし」と言われるほどの武士になったという逸話が残されています。

    歌麿の描く山姥は髪がボサボサで眉毛も太く、たくまししい姿をしていて、山奥で生活している雰囲気がうまく表現されています。その山姥に上目づかいで見つめる金太郎の姿、優しく微笑みかける山姥の姿が印象的な絵です。
    「山姥と金太郎・栗」東京国立博物館

    山姥と金太郎を描いた歌麿作品は40種類以上にのぼります。その中で少し構図が異なるのが「山姥と金太郎・栗」です。長大判という画面に背の高い山姥とその山姥にすがりつく金太郎の構図が描かれたなんとも味わい深い絵があります。

    山姥の姿も髪がボサボサという感じではなく、山姥のたくましさが少し控えめな雰囲気が漂いそれがまたこの絵の魅力に繋がっているようです。
    「母と子」東京国立博物館

    母と赤ちゃんの優しい空間がそこに漂うような愛の姿がある「母と子」は、母親の全身像を画面の中に収めていないことやバックの空間の余裕など母子の姿を強調することを計算して描かれている作品です。

    外面的な美しさと内面的な美しさがみごとに表現されていることが素晴らしいと言われている一方で、母子の姿を借りて女性美を風俗的に捉えているのでないかと思わせる描写としても注目されている作品です。

    喜多川歌麿のライバル出現で画風が変わる

    「立ち美人図」鳥文斎栄之筆 摘水軒記念文化振興財団
    「風流略六芸 生花」鳥文斎栄之筆

    美人画浮世絵師として有名になっていた歌麿に鳥文斎栄之という美人画を描くライバルが現れます。鳥文斎栄之の描く美人画は、12等身の美しい女性の姿が表現されていて、どのジャンルの女性を描いてもどれも気品がある女性像に歌麿も刺激を受けたようです。
    「青楼十二時 酉の刻」
    「青楼十二時 戌の刻」

    「青楼十二時」のシリーズは、午前0時〜午後10時までの遊女たちの生活ぶりを描いた作品です。歌麿は、鳥文斎栄之の絵に刺激を受け女性の姿態描写を意識し、衣装美に着眼をするようになります。衣装の輪郭線を没線式にするなど工夫がされ着物の華やかさ質感を印象づけることに成功しているシリーズです。
    「青楼十二時 丑の刻」

    湯上がりのスラリとした女性が、裏返った草履を足で直そうとする仕草が印象的な「青楼十二時 丑の刻」は、歌麿の構図力が光る作品として有名です。歌麿の描く絵をじっくり見るのも面白いかもしれません。ぜひ、ご鑑賞下さい。

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