盆栽

盆栽鉢の種類と選び方

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「盆栽」という語彙は、盆栽鉢を意味する「盆」と樹木を意味する「栽」から出来ているので、盆栽は盆栽鉢と樹木の両方が揃って、「盆栽」としての意義が成り立ちます。盆栽を観賞する際、鉢の上に植えてある樹木のみ目がいきがちですが、鉢の選び方次第で盆栽の魅力も左右されるので、盆栽鉢と樹木の「鉢合わせ」は大事です。また、盆栽鉢は樹木の生育にも影響を与えるので、盆栽を育てる上でも盆栽鉢選びは大事な作業です。

盆栽鉢の種類や特質を知ることで、盆栽の樹木に合う盆栽鉢を選ぶことができるので、樹木に合う盆栽鉢選びは、盆栽の管理や剪定と同じように大事な作業です。

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「産地」、「焼き方」、「型」の3つに分類される盆栽鉢の種類

盆栽鉢は、中国や日本国内で作られた芸術性の高い美術品レベルのものからお手頃価格で入手できるものまで、幅広くあります。

盆栽鉢の種類は沢山ありますが、大きく分けて「産地」、「焼き方」と「型」の3つに分けることができます。また、盆栽鉢は、生産地、焼き方や窯元、大きさ、素材などによっても用途が異なり、盆栽鉢の個々の部位には、それぞれ独特の呼び名があります。

‐盆栽鉢の「産地」と「歴史的呼び名」
日本製の盆栽鉢は、日本六古窯と呼ばれている焼き物の生産地である福井県の越前、滋賀県の信楽、愛知県の常滑と瀬戸、兵庫県の丹波、岡山県の備前で作られています。

中国製の盆栽鉢は、日本に渡って来た時代によっても呼び名が異なり、大正時代の終りから昭和の初めに入ってきた盆栽鉢は「新渡」、明治時代から大正時代の中頃までの盆栽鉢は「中渡り」、江戸時代末期以前の盆栽鉢は「古渡り」と呼ばれています。

‐鉢の焼き方
盆栽鉢は、鉢の焼き方によって2つに分類されます。一般的な陶器のように釉薬をかけて焼いた「釉薬もの」の盆栽鉢と釉薬をかけないまま素焼きにした「泥もの」(無釉)の盆栽鉢の2つに分類することができます。この「泥もの」の盆栽鉢は、焼いた温度によってさらに分類されます。高温で焼いた素焼きの盆栽鉢は「焼締め」、低温で焼いた盆栽鉢は「素焼き」に再分類されます。

泥もの盆栽鉢は、土の持ち味を生かした自然の風合い、素材感や色合いがあります。「釉薬もの」の鉢は、泥もの鉢とは対照的に華やかさや光沢があります。

‐型
盆栽鉢は様々な型があるので、見る角度によっても分類が異なります。盆栽鉢の縁を真上から見た場合、長角(長方形)と正角(長方形)、六角、八角、丸、小判型の楕円形、4つの花びらのような形をしている木瓜形(モッコ)、花形、小銭、輪花などの形をしている種類に分類されます。

盆栽鉢を真横の胴の部分から見た分類では、太鼓形、袋形、切立形、反形などの種類があります。

独特の呼び名がある盆栽鉢の部位

どの盆栽鉢でも共通した部位があります。それらは「縁」、「胴」、胴と底の角にあたる「尻」、底についている「足」、そして「穴」です。それぞれの部位には種類や独特の呼び名があります。

―縁
盆栽鉢の縁は、外に出ている「外縁」(そとえん)、縁が中に入っている「内縁」(うちえん)、縁の部分が外側には内側にもなく切り落とされている「切立」(きったて)あるいは「単口/単縁」(ひとえくち)と呼ばれている3種類の縁があり、それぞれ利所と難所があります。「外縁」は縁が外にでているので持ち運びをする際は便利ですが、他の盆栽鉢とぶつかったりすると縁がかけやすいところが難点です。縁が「内縁」の盆栽鉢は、縁が中に入っているので鉢から樹木が抜けにくい利点がありますが、初心者が植替えをする時に盆栽の樹木が抜けにくいので、樹木や根を痛めてしまうこともあります。また、縁が「切立」の盆栽鉢は、縁が外や内側にないので見た目はすっきりしており、樹木の手入れもしやすいですが、胴回りや底に手を当てないと盆栽鉢を持つことができません。

‐隅(角)
長角や正角の盆栽鉢にある四隅は「隅」(すみ)と呼ばれ、少し内側に入った「隅」の部分は「隅入」/(「入角」(にゅうかく))と呼ばれています。八角形をした盆栽鉢の「隅」の部分は斜めに切られており、この部分は「隅切」(すみきり)と呼ばれています。一方、「隅」の部分が丸くなっている丸型の盆栽鉢は「撫角」(なでかく)と呼ばれています。

‐胴
胴の部分に模様や彫刻がある種類の盆栽鉢も沢山あります。代表的な種類として、「太鼓」(たいこ)、「反形」、「額入」(がくいり)、「窓入」、「額入」、「帯」、「彫入」、「袋型」などがあります。

「太鼓」は、盆栽鉢を見れば一目瞭然ですが、胴の部分に和太鼓に打ってある鋲のような凹凸の模様が付いています。「反形」は、胴の部分が縁に向かって反った形をしています。

他には、「窓入」、「額入」、「帯」の模様や彫刻が胴の側面部分にある「彫入」と呼ばれている盆栽鉢や胴の部分が袋のように膨らんでいる「袋型」の盆栽鉢などがあります。

‐足
一般的に焼き物で高台(こうだい)と呼ばれているところが、盆栽鉢の足の部分です。盆栽鉢の足には、切足(きりあし)、ゆるやかな曲線でカットしてある段足(だんあし)、雲の彫刻が入っている雲足(くもあし)、足の付け根に鬼面がついている鬼面足(きめんあし)、富士山を思わせるような富士足(ふじあし)などの種類があります。盆栽鉢の「足」の部分に時間をかけて鑑賞する人は少ないですが盆栽鉢の「足」にも細やかな趣があるので、盆栽鉢を選んだり盆栽を観賞したりする際は、盆栽鉢の「足」にも注目してみると、盆栽の世界も広がります。

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盆栽鉢選びのポイント

盆栽鉢は、盆栽の樹木の魅力を引き立てるだけでなく、樹木自体を支えている根の張りや生長の手助けをする役割があるので、樹木にも調和して機能性にも優れた盆栽鉢を選ぶことがポイントです。

‐盆栽鉢は樹木を引き立てるパートナー
盆栽鉢は、樹木の魅力を一番引き立たせてくれる「パートナー」です。盆栽の樹形や枝ぶりなどがどんなに素晴らしくても鉢と樹木の相性が良くない場合は、その盆栽の素晴らしさも減少してしまいます。また、盆栽鉢と樹木のどちらか一方が引き立っても、調和がとれずバランスが良くないです。盆栽は盆栽の樹木と鉢、双方の相性が調和することによって、「盆栽」としての素晴らしさを引き立てることができます。

‐排水性、保水性や通気性が良い盆栽鉢
盆栽の樹木は、他の植木鉢に植えられている植物と同じように鉢の中で根を張り、そこから養分を取り、生長しています。水の管理や施肥も大事ですが、鉢の排水性、保水性や通気性が良いことも鉢選びには必要な要素です。盆栽の樹木や大きさにもよりますが、水はけや保水性は、釉薬や無釉の鉢、陶土、鉢底の穴の数や位置、大きさなどよっても異なります。釉薬を使って焼いてある鉢は、高温で焼かれているので無釉の鉢に比べて保水性が良いので水漏れや乾燥を防いてくれますが、通気性や排水性が悪いので、この種の盆栽鉢に樹木を長く植えておくと根腐れなどが起こりやすくなります。しかし、水はけを良くする用土や植え方の工夫などにより、釉薬が使ってある盆栽鉢でも立派な樹木を育てることができます。

‐熱の吸水性が良い盆栽鉢
樹木の根が生長するためには鉢の中で熱が必要になるので、熱の吸水性の良い鉢が盆栽鉢には向いています。素焼きの鉢と焼締めの鉢は、どちらも釉薬を使って焼いていない鉢なので、熱の吸水性が良いです。

‐樹木の大きさに合う盆栽鉢
盆栽鉢の大きさは、鉢選びの基本です。樹木の大きさに合う盆栽鉢を選ぶポイントとして、樹形全体の大きさよりやや小さめの鉢を選ぶと、比較的盆栽全体のバランスがとりやすいです。また、盆栽の樹木を正面から見た横幅の大きさと同じぐらい、あるいはやや小さめの鉢を選ぶと安定感があり収まりやすいです。洋服選びと同じで、小さすぎると窮屈な感じがあり、大きすぎるとだらしがなく間が抜けた感じなります。

盆栽鉢の大きさの単位は、外寸法のmmの単位が使用されています。盆栽鉢によっては、尺間法が使用されているものがあるので、購入の際は確認が必要です。例えば、「7号」サイズの盆栽鉢は、約210mm (一寸=約30mm:30x7=210)ですが、焼き物で出来ている盆栽鉢はオートメーションの機械で作られた製品と違い、一つ一つ製造工程や焼き具合によっても微妙に違いが出てきます。また、盆栽鉢の寸法は「内寸法」ではなく「外寸法」なので、購入したり植替えをしたりする際は、実際に盆栽鉢の「内寸」の寸法を確認することが必要です。

‐形
盆栽の樹木を育てたり管理したりする上で、盆栽鉢の形も鉢選びでは重要です。樹木を鉢に植えて倒れやすく安定しない盆栽鉢は、鉢が倒れて枝や幹が折れたり、樹木が抜けてしまったりする恐れがあります。また、懸崖の盆栽鉢は、どちらか一方に枝が下がったり、横に伸びたりしているので、鉢が安定するように工夫することが必要となります。

‐鉢の深さ
盆栽鉢の深さは、大きく分けて浅鉢、中深鉢、深鉢の3つに種類に分類されます。鉢の浅い順に陶盤(とうばん)中浅、中深い、懸崖(けんがい)、下方(げほう・蘭鉢)などの種類があります。

樹木に対して鉢が深すぎると、鉢の中の温度が上がりにくくなるので、樹木の根の生育には良くないです。盆栽鉢の深さは樹木の種類、樹形や盆栽の作り方・仕立て方によっても異なります。

‐樹木の種類や特性に合う盆栽鉢
盆栽鉢選びは、鉢の外観だけでなく鉢の機能性も重視して、樹木の特性に合った盆栽鉢を選びます。

松柏類の盆栽には、基本的に「泥もの」(無釉)の盆栽鉢が昔から使用されており、それ以外の盆栽は「釉薬もの」の盆栽を使用することが基本とされています。中でも松の盆栽は隅のある長方形の盆栽鉢や紫や朱の泥もの盆栽鉢に植えると、松の盆栽のもっている素晴らしさが一層引き立ちます。

一方、実もの、花もの、雑木や葉もの盆栽は、基本的に釉薬を使って焼いた盆栽鉢との相性が良いです。鉢を選ぶ際のポイントは、鉢の色です。黄色や白系の盆栽鉢は、新緑の葉を引き立てます。秋の実もの盆栽や紅葉を楽しむ盆栽は、落ち着いた青系の盆栽鉢が一層色づいた実、紅葉した葉、枝ぶりの美しさを引き立たせてくれます。また、花を楽しむ盆栽は花が主役なので、鉢の色はできるだけ邪魔にならない脇役的な存在感がある落ち着いた色合いの盆栽鉢を選ぶと花の華やかさが引き立ちます。

欅の箒作りや雑木の寄せ植え等は、小判型の楕円形の浅い鉢が向いています。

小さな盆栽は、身近な瀬戸物の底に穴をあけたものを利用しても育てることができます。駅弁の中に入っている瀬戸物でできた醤油入れや釜飯の瀬戸物容器などを利用しても、オリジナルの盆栽鉢として活用することができます。身近にある瀬戸物を利用して旅先で買った苗木を植えて作った盆栽は、「粋な旅の思い出」として楽しむことができます。

まとめ

盆栽は、鉢の上から出ている樹木の樹形や枝ぶりを中心に鑑賞しがちですが、盆栽鉢も樹木と同じような素晴らしさが沢山あり、歴史も深く種類も豊富です。また、高価なものからお手頃高価ものまである盆栽鉢の中から樹木との調和が良く機能性も優れ、樹木の特徴や素晴らしさを一番引き立してくれる盆栽鉢を選ぶことが、一番良いです。盆栽の主役は盆栽の樹木と鉢の両方なので、どちらか一方のインパクトが強くてもバランスが良くないです。高価な美術品レベルの盆栽鉢でなくても盆栽の「鉢映り」が良く、樹木と鉢双方の「鉢合わせ」が良いお手頃価格の盆栽鉢は沢山あります。また、高価な盆栽鉢だけでなく自分で作ったり見つけたりした鉢や身近にある瀬戸物の器を盆栽鉢に利用しても、基本的に鉢と樹木とのバランスがとれ、通気性、排水性や保水性が良ければ、大丈夫です。

豊富な種類の中から樹木に合う盆栽鉢選びは、一見難しそうに見えますが、鉢選びの基本を理解することで盆栽鉢と樹、双方に合った盆栽鉢を選ぶことができます。盆栽鉢選びの基本は、樹木に合った鉢の大きさ、色、形、深さ、そして鉢と樹木のバランスや調和がとれた鉢を選ぶことがポイントです。

盆栽の樹木を剪定したり樹形を作ったりすることも楽しいですが、日頃から丹精込めて育てている盆栽に合った盆栽鉢を選ぶことも、「盆栽ライフ」の楽しい作業の一つです。

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