スティーブ・ジョブズもよく訪れたという西芳寺の魅力

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「古都京都の文化財」17か所の一つとして1994年に世界文化遺産として登録されている京都市西京区にある西芳寺スティーブ・ジョブズが家族とよく訪れたお寺として有名です。アップルの共同創業者として知られる彼が愛した西芳寺の魅力をご紹介します。

スティーブ・ジョブズと禅と日本文化

病気のため2011年8月にアップルのCEOを退任するまで、スティーブ・ジョブズがipod、iphone、ipadなど革新的なものを世に送り出してきたことは皆さんご承知のとおりです。
テクノロジーを魔法に変えた人物と言われるジョブズが、どのようにして日本文化に傾倒していったのでしょうか。
ジョブズ本人が唯一公認した伝記『スティーブ・ジョブズ』によると、インド放浪を経て故郷のロサンゼルスに戻った20歳の頃ある一冊の禅の入門書に出会い夢中になります。それは、1959年に渡米しサンフランシスコ禅センターを設立するなどアメリカ仏教界へ大きな影響を与えた曹洞宗の僧侶である鈴木俊隆(すずきしゅんりゅう)が書いた『zen mind beginners mind』です。
1970年に米国で出版されて以来、世界中で読まれている禅のバイブルです。その後、鈴木俊隆がアメリカに招いた同じ曹洞宗の僧侶である乙川弘文(おとがわこうぶん)と1971年に出会い深い感動を覚え交流を深めます。30年に及ぶジョブズと乙川弘文との交流は、2012年2月に日本語版が発売されたマンガ『The Zen Of Steve Jobs』にも書かれているほどです。この本は現在、世界各国で翻訳出版されています。
乙川弘文は、ジョブズが興したNeXT社の宗教顧問に就き(1985年〜1996年)、1991年にはジョブズとローリン・パウエルとの結婚式も執り行っています。その間日本文化をこよなく愛する彼は、家族を連れて京都にたびたび訪れます。
西芳寺もお気に入りのお寺でした。アップルのCEOを退任する前年の2010年5月にも京都を訪ねた彼は、西芳寺に足を運んだのでしょうか。

西芳寺の魅力

別名、苔寺と言われるくらい苔に覆われた風景は珍しく、四季折々の表情で私たちを楽しませてくれます。苔の種類はなんと約120種類にも及び、気候の変化によりさまざまなコントラストを生み出します。約3万平方メートル(約9千坪)にも及ぶ庭園は、年間を通じて美しい景色を見せてくれますが紅葉の季節は特に秀逸です。
立ち並んだ木々の間に苔がびっしりと敷き詰められ、その上には紅葉が加わって見事な風景を作り出してくれます。知らぬ間に時が経ってしまいます。雨の季節も堪能できますよ。生き生きとして濃い緑色をした苔たちが私たちを出迎えてくれます。
苔は地面だけでなく木のまわりにも生えていて、何とも神秘的です。この美しさは、スティーブ・ジョブズならずとも何度も足を運ばずにはいられませんね。

開山は行基、中興開山である夢窓疎石が「西芳寺」と改めました

臨済宗の古刹である西芳寺は、飛鳥時代には聖徳太子の別荘があった場所とされています。奈良時代に入り、聖武天皇の勅願を得た行基が別荘から寺へと改めたと伝えられています。開山当初は法相宗(ほっそうしゅう)で「西方寺」というお寺でした。
平安時代には空海も入山したとも伝えられています。鎌倉時代になると、法然により浄土宗に改宗されました。法然を師と仰ぐ親鸞も訪れています。仏教界の大物が次々と登場します。室町時代に入り荒廃したお寺を再興するために、1339年松尾大社の宮司であった藤原親秀(ちかひで)が招請したのが夢窓疎石という禅僧です。この夢窓疎石なくして今の西芳寺はないといっても過言ではありません。
夢窓疎石は夢窓国師、正覚(しょうがく)国師、心宗(しんしゅう)国師など七つの国師を天皇から賜った七朝帝師(しちちょうていし)と呼ばれた大物です。夢窓疎石が開山したお寺は、美濃の虎渓山永保寺、甲斐の恵林寺、同じ「古都京都の文化財」17か所の一つである嵯峨嵐山の天龍寺など数多く、西芳寺を模して創られたと言われる金閣寺、銀閣寺とも勧請開山(名目上の開山)は夢窓疎石です。
夢窓疎石は、西芳寺臨済宗禅寺として再興します。この時、お寺の名前も「西方寺」から「西芳寺」へと改めます。

天才造園家である夢窓疎石によって作られた西芳寺の庭園

西芳寺の一番の見どころは夢窓疎石によって作られた庭園でしょう。西芳寺庭園を手がけた夢窓疎石は、室町時代の天才造園家です。その類まれな才能をいかんなく発揮して手がけた庭園は、天龍寺庭園世界遺産、国の史跡及び特別名勝)、永保寺庭園(国の名勝)、瑞泉寺庭園(国の名勝)、恵林寺庭園(国の名勝)、覚林房庭園(町指定文化財)とそうそうたるものです。西芳寺庭園も例外ではありません。国の史跡および特別名勝に指定されています。
庭園は、上段の洪隠山(こういんざん)と呼ばれる枯山水庭園と下段の黄金池(文字通り「心」という字をかたどっているため心字池とも呼ばれる)と称される池泉を中心とする池泉回遊式庭園の二段から構成されています。
黄金池には長島、朝日ヶ島、夕日ヶ島と呼ばれる三つの小島があり、造られた当時は白い砂でおおわれていたようですが、今は苔でおおわれ当時の面影はありません。今は庭園全体が苔でおおわれて苔寺として有名な西芳寺ですが、作られた当初は苔など生えてなくて、苔におおわれるようになったのは、江戸末期と言われています。

今は苔でおおわれて苔寺として有名な西芳寺は、スティーブ・ジョブズだけでなく訪れる人を魅了するお寺です。あまりの人気のせいか、1977年7月からは一般の拝観を中止し往復はがきによる事前申し込み制となっています。手続きは面倒でも訪れる価値は十分ありますよ。

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