景勝地

歩いて味わう奥入瀬渓流

関連キーワード

 奥入瀬渓流の遊歩道全長14kmを完歩する起点は焼山です。
時間があれば、奥入瀬渓流館に立ち寄って歩き出しましょう。奥入瀬の自然や生態系をビデオ映像などで紹介しています。隣接して奥入瀬湧水館もあります。また、遊歩道に歩を進める前に出合い橋と周遊木道もぜひ見ておきましょう。楓橋を渡ると奥入瀬川と蔦川の合流する中州に木道がめぐらされ、中州から国道103号線方面に吊り橋がかかっています。長さ55m、アフリカの木材を利用して作られたのが出合い橋です。

 そして遊歩道を歩きだします。しばらくは遊歩道とは名ばかりの草に覆われて見えないほどの細い道を進むことになります。道に沿ってケヤキ、ミツデカエデ、ツルアジサイなどが生えています。幹に名前のプレートがつけられていますので、わかりやすくなっています。
ところどころで車道を歩きながら30分ほどするとブナの二次林が現れます。二次林とは、一度伐採されたブナの自然林が再度林となったものです。渓流は見えませんが、せせらぎが絶えることなく聞こえてきます。苔むした巨石が転がっている様は石庭のようです。そうしていると木造のトイレがある黄瀬バス停に着きます。

 ここから石ヶ戸までは約3kmです。単調に見えるようですが木の段を上ったり、木道を歩いたり周囲の植物や風景も様々に変化します。
しばらく奥入瀬の流れから離れて歩き、道路を横断するとそこが惣辺のバス停です。ここからしばらく歩くと「三乱の流れ」に当たります。渓流の中にたたずむ岩の上に植物が生えています。さらにシダ類が密生し、亜熱帯雨林を思わせる景観がしばらく続き、渓流に面して置かれた木のテーブルが現れると、休憩所のある石ヶ戸です。

 石ヶ戸には、道中で唯一の休憩施設があります。展示室と売店を併設し、そばなどを食べることができます。食事をするなら焼山かここ以外には十和田湖まで何もありません。ただし遊歩道にはところどころにベンチもありますので、弁当などを持参するのであれば、そこで食べることは可能です。

 石ヶ戸とは、この地方の方言で岩屋を意味します。遊歩道のわきにカツラの巨木に支えられた大きな岩があり、女盗賊の根城だったという伝説があります。このあたりは浅瀬に砂洲が張り出し、手を伸ばせば渓流に触れることができます。

 道路の反対側板状節理の岩がそびえる馬門岩が見えてきたら、いったん道路を横断し、橋を渡ります。ここからしばらくは左岸を歩くことになります。途中、苔むした岩を削るような激流を目にします。これが「阿修羅の流れ」です。奥入瀬を代表する景観です。

 次の「雲井の滝」も代表的なビューポイントで、車道を横断して支流を少し遡ったあたりにあります。25mの高さから3段になって落下している滝は豪壮な美しさです。しぶきがかかるほど近づけるので撮影スポットとしてもおすすめです。

 雲井の滝から先は流れに沿って歩きやすい道が続きます。すぐに対岸の崖に「白布の滝」が見えます。以降、「銚子大滝」まで数々の瀑布に目を奪われることになります。玉簾の滝は国道側からしか見ることができないため、油断すると見逃してしまいます。横じまの岩の上をコロコロと水玉がはじけるように転がり落ちていきます。

 白糸の滝は白く糸を引く幾筋もの流れが日本画の中に入り込んだような錯覚を起こさせる滝です。新緑にも紅葉にも映え、これこそ日本の美というべき景色が広がります。このあたりの滝は、まさに奥入瀬渓流ウォーキングのハイライトと言えます。いずれも奥入瀬の本流に流れ込む支流が崖の上から流れ落ちているもので、豪快であり優美ともいえます。遊歩道に表示が立っていますが、いくつかの滝は川の向かい側や道路の反対側なので近づいて見ることはできませんが、その美しさは充分に感じることができます。

 奥入瀬渓流最大の見どころが銚子大滝です。本流にかかる唯一の滝でダイナミックな景観です。この滝があるため、イワナやヤマメなどの魚はこれ以上川をさかのぼることができず、明治の初めに和井内貞行がヒメマスの放流に成功するまで、十和田湖には魚がいませんでした。

 詩人で小説家の佐藤春夫は奥入瀬渓流になぞらえて人生を詠いましたが、まさに奥入瀬渓流は青春の輝きそのもののように美しい景観を堪能させてくれます。もし時間に余裕がなくても、このハイライト部分だけでも見る価値があります。

  「住まば日の本 遊ばば十和田 歩きや奥入瀬三里半」−明治の文人、大町桂月が讃えた奥入瀬の景勝です。
まさに奥入瀬渓流の魅力は歩いてみると実感できます。

十和田湖から流れ出る清流が織りなす変化にとんだ景観、そしてそれを彩る草花や樹木。4月下旬、雪が溶けた散策路にニリンソウが可憐な花をつけ、5月上旬、ブナやカツラが新しい葉を芽吹く。色鮮やかな秋の紅葉については言うまでもありませんが、滝の氷結と渓流以外すべてが冠雪した墨絵のような冬の風景も印象深いものになっています。

▲ページトップ