西洋画愛の画家シャガールの代表作たち

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愛の画家といわれ、多くの芸術ファンの人びとに愛されていたのがシャガールです。ロシアに生まれ、パリを行ったり来たりという生活をしながら、最後は南仏へと渡り生涯を追えました。 シャガールが愛の画家といわれている所以には、妻をモチーフにさまざまな作品を描いていたからといわれています。一番はじめの妻であるベラはロシアの同郷の女性であり、彼女の美しさに惹かれたシャガールは彼女がこの世を去るまで描き続けます。 そして、彼女が他界してしまった後はシャガールは二番目の妻であり、生涯をともに過ごすこととなるイギリス出身のヴァンレンティーナと結婚をしています。また、二番目の妻も愛し続け、彼女をモチーフに作品を描き続けます。今回、ここではシャガールという人物の描いてきた代表作をいくつか紹介します。

「私と村」

独創的な画風で知られているシャガールの作品のなかでも、とりわけ有名な作品は「私と村」です。この頃のシャガールには関しては、ロシアからパリへと旅立ち、その孤独のなかでロシアへの望郷の思いを描いていた時期といわれています。 そのため、モチーフのどこからかロシアへの思いやベラへの思いがどこか伝わってくる作品となっています。パリという都会のど真ん中に独り寂しく製作活動を続けていたシャガールは、どこか村というものに憧れを再度抱いてしまっていたのかもしれません。 ヤギや乳搾りのモチーフ、背景のギリシア教会や草刈鎌を持って農作業をする男や女など、まさにシャガールの故郷を思わせる作品となっているのです。

「誕生日」

シャガールの描く作品は、浮遊感があり、どこか非現実的な雰囲気を醸し出しますが、ただただ愛と慈愛に満ちたものとして知られています。特に、ベラへの愛と芸術への思いが合致した作品として多くの方々に知られているのが、誕生日という作品です。 誕生日という作品は1915年にシャガールとベラが結婚をする直前に描かれている作品ですが、シャガールと思われる男性が体をねじらせながらベラへとキスをするという、一見不思議で不気味な作品なのですが、ともて幸せそうであり、二人の固い絆を感じることができるような、素晴らしい作品となっています。 詩的な作品を多く生み出しているシャガールでありながらも、この作品はシンプルに妻にその愛を伝えたいだけの作品であるともいわれています。躍動感があり、色彩も落ち着きながらも多く使われている素晴らしい作品のひとつなのです。

「サン=ポールの空と太陽」

母を亡くし、ロシアへと戻ったシャガールですが、再度パリへと戻ります。しかし、その頃には彼が生涯をかけて愛したい女性であったベラも病死してしまっています。悲壮感に溢れたシャガールでしたが、パリで活動をしていくうちに二番目の妻となる人物と恋に落ちて行きます。 シャガールはパリで生活をしていましたが、晩年になるとより温かく開放的で牧歌的な、自らが生まれ育った場所に近いような南仏での生活を好むようになります。フランス国籍をも取得するほどに、南仏という世界に魅せられたシャガールは、この頃にサン=ポールの空と太陽という作品を描いています。 サン=ポール=ド=ヴァンスという、中世の街に降り立ったシャガールはその美しさに魅せられこの柄を描いています。全体は青色をベースにしており、月はアクセントとして大きくイエローで描かれています。そして、さまざまな形状にそびえ立つ家々を描き、うっそうと木々を生やす森が描かれています。 それだけであれば、ただただ一般的な絵画であるのですが、そこはシャガールです。空には、馬や人間など、さまざまなモチーフを浮遊させてどこか平凡さを失った、浮遊感のある詩的な作品へと昇華させているのです。 空想がでありながらも、リアルなモチーフを織り交ぜていることからも、シャガールの想像力がいかに優れていたものだったかが伺い知れるのではないでしょうか。

「白い襟のベラ」

シャガールの愛した女性はベラという女性でしたが、彼女をモチーフにした作品は数多くあります。そのなかでも、シャガールは永遠に彼女に魅せられていたということが分かる作品が、白い襟のベラという作品です。 この左右に違和感を感じる方が少なくはありませんが、それはベラという人物が超現実主義的に描かれているのに対し、他の対象が全てシャガールの幻想から描かれているといわれているからです。一見、シンプルに田園のなかをけだるく歩いているベラを描写したもの、という印象ですが、どこかアンバランスであり、さまざまなモチーフから対比してベラが大きくうつっているのです。 さらに、空の色も青と白をバランスよく、空想的に使い分けており、絵画の下部にはどこか可愛らしい小さな愛のモチーフまでも垣間みることができます。陰影の使い方も、ベラは細かなところまで再現していますが、田園風景のタッチはまた違う製法にも見えます。 こういった、シャガールにしか出すことができない独創的な発想力がこの絵画を完成させていったのでしょう。

「結婚」

結婚についてをモチーフとしてシャガールは多く描いています。それは、自らのものを投影しているようなものから、彼の幻想で描かれた詩的なものまでさまざまです。 1950年に描かれた結婚という作品は、シャガールの絵画にしては珍しく花嫁が中心に赤いドレスを着て際立つように描かれていることから話題となりました。老婆やチェロを奏でる動物、そして薄らと見える線描きの人間。 さらには、全体には薄暗く青を基調とした背景となっており、より花嫁の存在が際立っています。 派手という言い方は別かもしれませんが、かなりシャガールの描いている女性のなかでは個性を際立たせている女性がモチーフとなっており、彼が伝えたかった若くして結婚という人生を選択した女性へのエールや悲壮感など、さまざまな感情が入り乱れているような、そういったイメージすらも与える一枚となっています。

「白い磔刑」

1938年にシャガールによって描かれた作品のひとつが、白い磔刑というものです。イエスキリストのはりつけについてをモチーフにした作品であり、これらの作品は多くの画家がモチーフとしている、ある意味では定番的な作品でもあります。 しかし、シャガールはこの白い磔刑という作品にさまざまな強いメッセージを詰め込んでいることで知られています。それが、火のついたシナゴーグを描いているからといわれています。 ユダヤ人に対しての冒涜であったり、迫害、そして軽蔑など、さまざまな差別と偏見に満ちたユダヤ人への思いに警鐘をならしているようにも感じられます。さらに、キリストというユダヤ人の象徴を描くことにより、さらにメッセージ性を強調していることも話題と呼んだひとつのポイントといえるのではないでしょうか。 この頃、水晶の夜という反ユダヤ主義暴動が起こったことへのシャガールの強い想いを伺いしることができる作品であり、普段の愛に満ちたシャガールの作品とは打って変わってか、また角度の違う魅力にも気付かせてくれる作品となっているのです。

シャガールの作品の鑑賞の仕方

シャガールは、数多くの名作を残した天才画家として大変有名な人物です。妻をモチーフに描く作品を楽しみながらも、彼が抱えていた悩みや境遇を示唆している作品、そしてユダヤ人へ対する慈愛の想いなど、さまざまなモチーフを追って鑑賞していくと、より彼の思いが絵画から強く感じ取れるのではないでしょうか。ぜひ、さまざまな彼の作品を確認していってみてください。

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