あじさい寺はなぜ多い?紫陽花と寺院の関係

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あじさい寺はシーズンになると多くの人で賑わう、日本人も外国人も大好きな人気の風物詩。
紫陽花の淡い花色が境内に広がる様は、寺院の建造物などと相まって、幻想的な雰囲気を作り出してくれます。
ところで、寺院ではなぜあじさいを栽培するようになったのでしょう。紫陽花と寺院の関わりについて迫ってみましょう。

品種の多いあじさい

あじさいは5月から7月にかけて、赤紫から青紫の花を咲かせる植物です。花のように見える部分は、実際には花びらではなく「萼(ガク)」の部分。丸く縁取るように咲く「額咲き」と、全体的に丸く咲く「手まり咲き」の2つのタイプがあります。「紫陽花」と書かれますが、これはもともと「ライラック」の花を指していたようです。とはいえ、赤みや青みを帯びた紫色の花が、丸くお日様のように咲く様を表していて、あじさいを表しているように思えます。

紫陽花は土壌の酸性度によってその色を変えることでも有名です。土壌が酸性に傾くと青に、アルカリ性に傾くと赤に色が変わります。土壌改良材を使って手軽に花の色を変えられることから、園芸品種として古くから家庭でも栽培される植物です。

自由に色を操れるだけでなく、品種も数多く生み出されているのも、紫陽花を楽しむ人の多い理由の一つです。通常は4枚の花が、5枚や複数になっていたり、縁に丸みやギザギザがあったりと、どの紫陽花も見る人を楽しませてくれます。挿し木で増やすのも容易で、植木鉢でも栽培でき、ベランダでも育つ点も、人気の理由かもしれません。

寺と紫陽花の関わりは梅雨に秘密が

紫陽花が咲くのは5?7月ごろ。梅雨時と呼ばれる季節で、雨を受けた紫陽花の鮮やかな色は、雨模様で暗い景色を明るく見せてくれます。決して派手ではない色合いも、寺院の建物と相まって日本的な独特の雰囲気で素敵な風景です。

文献に紫陽花が登場するようになったのは、万葉集の頃。平安時代の後期になると、多くの歌に登場するようになります。原産地は日本で、ヨーロッパアメリカなどでも広く栽培されており、園芸店や花屋では両者を区別し「ハイドランジア」や「西洋アジサイ」として扱っています。

アジサイの咲く梅雨の時期は、医学の発展していなかった時代、疫病の流行しやすい時期でもありました。流行り病で亡くなった人たちに、その時期に咲くアジサイを手向けたというのが、寺院でアジサイが栽培される理由とのことですが、真偽は定かではありません。とはいえ、挿し木で増やせるアジサイは、寺院の僧侶たちにも人気があったことは間違いないでしょう。

あじさい寺といえば鎌倉の明月院

鎌倉には他にもあじさいの名所があり、この季節には多くの観光客が訪れます。中でも明月院は最も有名な寺院の一つです。北鎌倉の駅から近い明月院は、14世紀中頃にできたと言われ、元は善福寺の塔頭でした。善福寺が亡くなった後も、明月院だけは残り、アジサイだけでなく円窓から見える日本庭園も有名な寺院です。

実は明月院のアジサイは戦後に植えられたもので、それ以前はむしろ紫陽花とは無縁の寺院でした。戦後の物資不足で、参道の両脇に使う杭の代わりに、手軽に増やせるアジサイを植えたのが始まり。その後、挿し木でどんどん増やし、現在のようなアジサイ寺になったそうです。参道を取り囲むアジサイの花が、そんなに新しいものだったとは意外ですね。

明月院はアジサイ以外にも、一年を通して梅や桜、蝋梅などの花を楽しめます。アジサイの季節には日本庭園で、菖蒲の花も鑑賞できるので、時間があれば是非立ち寄ってましょう。鎌倉には明月院の他に、眺望散策路に植えられた紫陽花が見事な長谷寺や、覆い尽くさんばかりに参道の両脇に紫陽花の咲く成就院など、各地で紫陽花を鑑賞できます。

北の鎌倉と呼ばれる本土寺

千葉県松戸市にある本土寺も、「北の鎌倉」と称されるほど、紫陽花のきれいな寺院として知られています。境内には3万本の紫陽花が植えられ、一斉に咲く姿は息をのむほどの見事な光景です。紫陽花の季節には6000本の菖蒲も花を咲かせ、境内が華やかな雰囲気に包まれます。桜や紅葉も美しい本土寺は、多くの観光客が訪れる寺院です。

本土寺を有名にしているもう一つの理由が、本土寺に伝わる「過去帳」と呼ばれる書物です。13〜18世紀に起きた出来事が記された書物で、歴史を知る上で貴重な資料として重要視されています。現在は本末を解体してそれぞれ別個の寺院ですが、全国の日蓮宗の寺院を束ねる本山だったという権威のある寺院です。

130種類のあじさいが咲き誇る奥能登の平等寺

石川県の奥能登と呼ばれる地域にある平等寺も、あじさいが綺麗なあじさい寺として有名な寺院です。平等寺が創建されたのは10世紀の中頃。真言宗の寺として建てられました。十三仏諸尊が祀られていることで知られています。

平等寺のあじさいの見所は、なんと言っても種類の多さ。130種類のあじさいが楽しめるのが最大の特徴です。近年各所で見られるライトアップではなく、行灯やロウソクで紫陽花を照らす「あじさい花灯り回廊」も話題を呼んでいます。開花時期は6月中旬から7月中旬にかけてですが、イベントの行われる6月下旬が一番の見頃です。

宇治の山あいに立つ三室戸寺

京都府宇治市にある三室戸寺は、西国三十三所の第十番札所。8世紀ごろに創建されたと言われていますが、詳細はまだ不明のようです。境内の杉木立ちの間に広がる、色とりどりのあじさいが咲く風景は、見る人を神秘的な気持ちにしてくれます。

平等寺では桜や紅葉といった定番の季節より、5月のツツジや7月の蓮といった、目の高さよりも低い花の時期がおすすめです。先ほどのあじさいと同じく、スギの木立ちの間に広がる花が、幻想的な光景を作り出しています。特に蓮の花の咲く7月の午前中は、朝もやと相まって仏の世界を垣間見るかのような風景です。

特徴あるあじさい寺を探してみよう

栽培しやすい紫陽花は、寺院でも広く見られる植物で、あじさい寺と呼ばれる寺院も、全国に数多く見られます。メディアで紹介される定番のあじさい寺もいいですが、地元や周囲の地域を探して、新たなあじさい寺を発見してみてはいかがでしょう。

同じあじさいでも植えられ方で、その見え方も変わってきます。植えられ方や建物・立地などに特徴のある寺院なら、今までとは違うあじさいを楽しめそうです。ガイドブックは手に持たず、自分だけのあじさい寺を探してみませんか。

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