世界遺産

3つの宗教が交錯する聖地、エローラ

関連キーワード

3つの宗教の聖地であるエローラの石窟寺院群

エローラはインド西部のマハーラシュトラ州にある石窟寺院です。

近隣には同じく世界遺産に登録されているアジャンター石窟寺院群があるため、アジャンターとエローラを組み合わせた観光ツアーが多くの旅行会社で実施されています。 エローラ観光の拠点となる都市はアウランガーバードであり、大都市ムンバイから多数の列車やバス、航空便が出ています。

アウランガーバードからバスかタクシーで40分ほどの場所にエローラの石窟寺院群があります。

入場口付近には飲食店があり、飲料水はそこで買うことができます。夏であると気温は40度を越すため、エローラを訪れる際は水分補給をこまめに行うのがよいでしょう。

岩を掘った寺院の遺跡が数多く点在しており、これらの遺跡は5世紀から10世紀の間に造られたと考えられています。

エローラには34もの石窟があり、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の僧侶たちが幅2kmの崖に僧院や礼拝堂を掘り上げました。

エローラの石窟で最も歴史が古いのは仏教窟であり、南端の第1〜12窟の仏教窟は7〜8世紀に造営されました。

仏教窟の北にあるヒンドゥー教窟は9世紀ごろまでに建設されたとされており、第13〜29窟がヒンドゥー教窟となっています。

一番北にある第30〜34窟は9〜10世紀ごろにつくられたジャイナ教となっています。

エローラは石窟を造営した3つの宗教の聖地とされています。

つくられた当時から今日に至るまで巡礼者が集い、3宗教が共存するこの石窟群は古代インド社会の寛容の精神を表す遺産となっています。

エローラの仏教窟

エローラの石窟群で最も歴史が古い仏教の遺跡は二種類の石窟があるのが特徴です。

一つはヴィハーラ窟と呼ばれており、エローラの仏教窟のほとんどはこのヴィハーラ窟となっています。

ヴィハーラとは僧院という意味であり、修行僧がこの石窟で生活をしながら瞑想を行いました。

石窟がつくられた当時の仏教は、己の救済だけを目的とする内向的な思想であったとされていました。

ヴィハーラ窟は瞑想室のほかに台所や寝室の設備もあり、階層構造となっている大きな窟が多いのが特徴となっています。

もう一つはチャイティヤ窟と呼ばれており、仏塔を安置して礼拝する目的で彫られた石窟です。

エローラで唯一のチャイティヤ窟である第10窟は、ヴィシュヴァカルマ窟といい、別名で大工の石窟と呼ばれています。仏教石窟では最高傑作と称されていて、チャイティヤ窟では最後期のものと考えられています。ストゥーパの前に仏倚座像(台座や椅子に座って両足を垂下した仏像)を配した巨大な仏龕が設置されています。

ヴィハーラ窟もチャイティヤ窟も、本来は木造の僧院と仏殿を模範としているため、木造構造を模した柱や梁が石窟内部に彫られています。

エローラのヒンドゥー教窟

エローラのヒンドゥー教窟は彫刻技術や美術的観点から、その様式はそれぞれ異なっているものが多いです。いくつかの石窟寺院は複雑な構造となっており、数世代の期間をかけて建設されたと考えられているものもあります。

エローラのヒンドゥー教窟を代表するのは第16窟のカイラーサ寺院です。エローラの寺院といわれたらまずカイラーサ寺院を思い浮かべる人がほとんどでしょう。

この寺院はエローラの石窟寺院では最大の規模を誇り、幅46m、奥行き80m、高さ34mのカイラーサ寺院はひとつの岩からできた「石彫寺院」です。

この寺院はカンボジアのアンコール・ワットインドネシアのボロブドゥール遺跡と同じく、ヒンドゥー教の聖山とされているカイラス山をイメージしてつくられたものだと考えられています。

エローラの一帯は白亜紀に噴出した玄武岩が広がる地層であり、カイラーサ寺院は黒く輝く玄武岩の巨大な冠石を頂き、屋根や柱は神々や悪魔、空想上の動物が多数彫られています。

これらはインドの叙事詩である「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」の世界を描いたものであり、当時としては非常に高い彫刻技術で彫られたことがわかります。

エローラのジャイナ教窟

9世紀にエローラの地を訪れたジャイナ教徒はエローラで最後の開窟を行いました。

ジャイナ教の石窟はそれほど規模は大きくありませんが、繊細で複雑な構造であるのが特徴で芸術作品としても評価されています。

彼らはカイラーサ寺院に強く影響を受け、盛んに石窟寺院を建設しましたが、その多くは未完のままに終わりました。

ジャイナ教窟の中で最も完成度が高いのは第32窟であり、チョーター・カイラーサナータと呼ばれるこの寺院は正面の石窟の中庭には外部に出現した神殿があります。重層構造となっており、天井には蓮の彫刻が彫られています。

32窟、33窟と繋がっている34窟には、マンゴーの木の下でライオンの上に座った女神像が彫られています。

現代のジャイナ教寺院は中央部に神殿があり、神殿の周りを外郭がぐるりと囲っている構造になっていますが、エローラのジャイナ教の石窟寺院は中庭の神殿を囲む石窟寺院群で構成されており、ジャイナ教の寺院の原形ともいえるものであるのです。

▲ページトップ