日本史

自然体で大らかな作風 万葉集の魅力

2018-03-10

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奈良時代に編纂された日本で最古の歌集である「万葉集」。誰もが一度はその名を聞いたことがあるでしょう。
万葉集が纏う自然体で大らかな作風の魅力をご紹介していきます。

素直で素朴、おおらかな歌が多い

和歌と言えば平安時代の雅な風習と言ったイメージを持っている人も多いと思います。手紙として歌を贈り合う平安貴族たちにとっては、歌が上手いというのが美人や美男子の条件でもありました。しかし平安時代に作られた和歌は上手さを追求するあまり技巧的な歌が多いのも事実。

一方、万葉集の歌は、平安時代とは違った自然体な大らかさがあります。悲しいなら「ああ悲しい」と嘆き、嬉しいなら「とても嬉しい!」と表現する、そんな素直さが見受けられます。

・我が妻は いたく恋ひらし 飲む水に 影さへ見えて よに忘られず(巻20・4322)

・銀も 金も玉も何せむに 勝れる宝 子にしかめやも(巻・803)

このように、品詞分解や注釈、現代語訳すら不要なほどの明快さのある歌が多く乗っています。

上の歌は、「防人歌」と言って、都を離れ九州沿岸の防衛のために単身補任している男性の歌です。朝廷の命令で行くのですが、移動や現地での食料調達も自力で行わなければならず、彼らは極限の苦労の中にいたのです。そんな彼らの心の声がありありと想像できる歌となっています。

下の歌は有名な歌人・山上憶良の作品です。子どもが生まれた喜びを「どんな宝も子供に勝るものはない」と表現しています。なんだか「やったー!」なんて聞こえてきそうではありませんか?

情熱的で率直な恋歌

平安時代の恋歌は、歌枕(和歌に詠まれる名所)や故事、古歌などの知識を盛り込んで、より趣向を凝らした歌がたくさんあります。確かに上品で美しいのですが、愛を叫ぶには物足りなさを感じてしまします。

一方の万葉集には身も焦がす思い、恋人との別離の嘆き、片恋の苦しさ、そして恋人と過ごす喜びなどを情熱的(ときに官能的に)に歌い上げた作品が数多くあります。

・吾妹子が 植えし梅の樹 見るごとに 心むせつつ 涙し流る(巻3・453)

・朝寝髪 我は梳らじ うるはしき 君が手枕 触りてしものを(巻11・2578)

上の歌は、妻と植えた梅の樹を見るたびに今はいない妻を思い出し泣いてしまう、という大伴旅人の歌です。そこに「ある」梅の樹と、ここに「ない」妻の対比が悲しみを引き立たせます。

また、下の歌は、恋人と過ごした夜の名残を乱れた髪に託して「整える気にならないわ、ずっとあの人の腕枕に触れていた髪だもの・・・」という官能的な歌です。読み人知らずの歌ですが、一目で女性が作者とわかりますね。

万葉集は、天皇や貴族だけではなく官僚や軍人、農民や乞食などの歌も収めています。この懐の深さこそが、万葉集の魅力の一つであるといえるでしょう。

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