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どうやるの? 関節可動域訓練の目的とやり方

2018-05-17

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ケガや病気などでリハビリが必要になった際に、「関節可動域訓練」という言葉を耳にすることがあります。
健康なときにはなかなか聞かない言葉であり、なんのことなのか、どんなことをするのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、「関節可動域訓練」について言葉の意味や目的、具体的なやり方をご紹介します。

関節可動域訓練とは?

・「関節可動域」とは?
人間には、肩や膝、指など手足の関節から腰や首など背骨の動きも含めると、とてもたくさんの関節があります。
そして、それぞれの関節には曲げ伸ばしや捻りなど動かせる範囲があり、その動かせる範囲のことを「関節可動域」と言います。
身体の硬い人と柔らかい人がいるように「関節可動域」は個人によって異なりますが、病気やケガのない状態でそれぞれの関節がどの程度動くのが正常であるかという可動域が「参考可動域」として日本整形外科学会で定められています。

・「可動域制限」と「可動域訓練」
参考可動域よりも可動域が小さい場合や元の自身の可動域が病気やケガなどによって小さくなっている場合に「可動域制限がある」と言います。
そして、その可動域制限を少なくしたりなくしたりするために行う訓練を「可動域訓練」と言います。
可動域訓練のやり方については後ほど詳しくご説明しますが、自分一人で動かす訓練をするものから理学療法士などリハビリの専門職によってある程度の外力を加えて行うものなど様々な方法があります。

関節可動域制限はなぜ起こる?

出典:

そもそも「関節可動域制限」はなぜ起こるのでしょうか?
可動域制限が生じる主な原因をご紹介します。

・骨折やその他の外傷
若年者で関節可動域制限が生じる主な原因は、骨折や捻挫、肉離れ、関節周囲の皮膚の損傷といった外傷です。
骨折や捻挫によって数週間ギプスなどで関節を固定した場合、固定を除去した後は皮膚や筋肉をはじめとした周囲の組織が硬くなり伸張性が低下してしまうため関節の動きが制限されることがあります。
また、骨折により著明な関節の変形がある場合は、後遺症として可動域制限が残る場合もあります。
関節周囲の筋肉を損傷するいわゆる「肉離れ」を起こした場合、急性期は痛みが強く動かせなかったり、徐々に筋肉が治癒していっても治癒過程で元よりも筋肉が硬くなってしまうと可動域を制限してしまうことがあります。
皮膚の損傷では、やけどの痕がケロイドになったり切り傷によって皮膚が瘢痕化していると皮膚の伸張性が低下してしまい、関節可動域に影響を及ぼすことがあります。

・変形性関節症
中高年になるにつれて徐々に表れてくるのが膝や股関節、腰などの関節の変形です。
長期にわたり重労働やスポーツなどで関節を酷使してきた方や、関節を支える筋肉が弱い方に多く、関節がすり減って間にある軟骨が摩耗してきたり、骨の形状自体が変形してしまいます。
変形が進むと本来の可動域を動かすことができなくなってくることがあります。
痛みや可動域制限がひどい場合には、人工関節を入れる手術をする場合もあります。

・周囲の組織の柔軟性低下
骨折や捻挫の場合と同じように運動不足など関節の不動を原因として関節周囲の組織の柔軟性が低下して関節可動域が低下する場合があります。
程度が低いものはいわゆる運動不足により身体が硬い状態のことですが、寝たきりの高齢者などで十分なリハビリができていないと程度の強い可動域制限が現れてきます。
また、パーキンソン病や脳血管障害(脳梗塞や脳出血)、脳性麻痺など脳神経に関わる疾患では、異常な筋肉の緊張が生じるものもあり、リハビリを行っていても可動域制限が生じてしまうこともあります。

関節可動域訓練の目的

関節可動域訓練には様々な目的がありますのでご紹介します。
・関節可動域制限の改善・予防
関節可動域訓練の第一の目的は可動域制限の改善と予防です。
できてしまった可動域制限に対しては、少しでも改善して元の可動域を取り戻すこと、寝たきりなど不動が続くことでこれから可動域制限が生じることが予測される場合には事前の可動域訓練によって予防することが重要です。

・日常生活動作を中心とした機能改善
足首や膝、股関節の可動域が制限されていると正しい歩行動作が行えなくなります。
また、しゃがんだり正座をしたりといった動作もできなくなります。
肘や肩の可動域が制限されていると着替えがスムーズにできなかったり、食事動作が難しくなったりします。
このように、全身のどこの関節可動域が制限されてもなんらかの日常生活動作が制限されてしまいます。
関節可動域を保つことは、日常生活を円滑に行うためにとても重要なことなのです。

・血流や痛みの改善
関節の動きが悪いとその関節周囲の血流は阻害されてしまいます。
血流が悪いことで関節痛や褥瘡(床ずれ)ができたり、循環系のトラブルが起こる場合もあります。
関節可動域を保つことで痛みや皮膚トラブルの軽減や循環系のトラブル回避にもつながります。

・精神的な健康を保つ
寝たきりやそれに近い方にとって、身体を動かせないということが精神的なストレスになる場合があります。
定期的に身体を動かすことで交感神経を刺激することもでき、気持ちが明るくなる、やる気が起こる、食欲がわく、脳が活性化されるなど精神的にもよい効果が多々あります。

関節可動域訓練のやり方

関節可動域訓練の具体的なやり方と可動域訓練を円滑に進めるために同時に行うことの多い治療手技をご紹介します。

・自動及び他動運動
可動域訓練は基本的には「自動運動」、「他動運動」、「自動介助運動」の3種類から構成されます。
「自動運動」は、可動域訓練を行う本人が自分自身の関節の力だけで動かす訓練です。
自分自身の筋肉を使うことや動かすことによる痛みを自分で調整しやすいというメリットがある一方、自動運動だけでは可動域の限界を超えることがなかなか難しいというデメリットもあります。

「他動運動」は、本人は力を抜いておいて、理学療法士などの施術者が関節をコントロールして動かす訓練です。
強い制限があり本人の力だけではなかなか改善できない場合に、多少の外力を加えることでスムーズに可動域を拡大することができるというメリットがある一方、本人の痛みを聞きながら行うことやエンドフィール(可動域の最終域で感じる抵抗感)を正確に感じられないと関節を傷つけてしまう可能性があるというリスクもあります。

「自動介助運動」は、本人が動かしながらそれを介助するように施術者が介入するという訓練です。
筋機能が低下して他動では動かせるが自動で動かせない場合などに有効で、自動運動と他動運動の良さを両方兼ね備えた方法です。

・マッサージ
筋肉や皮膚をはじめとした関節周囲の結合組織の伸張性が低下していることで可動域制限が生じている場合には、可動域訓練とともに周囲の組織のマッサージを行います。
可動域制限の原因となっている組織が柔らかくなることで可動域が改善します。

・ストレッチ
ストレッチは、筋肉の伸張性を高めるために直接筋肉を伸ばす手技です。
筋肉の伸張性が低下していることで可動域制限が生じている場合には、その原因となっている筋肉をしっかりとストレッチしてから可動域訓練に入るとスムーズに進みます。

・モビライゼーション
モビライゼーションとは関節に直接牽引力を加え、関節が脱臼しないように関節周囲に存在している靭帯組織である関節包を中心にアプローチする手技です。
関節に不可逆的な外力を加えることもあるので、理学療法士などきちんと関節のことを理解している専門職のみ行うことができる専門的な手技です。

おわりに

今回は「関節可動域訓練」についてその目的とやり方についてご紹介しました。
実際に可動域訓練が必要になった場合、医師や理学療法士などの専門職から必要性などの説明はあるかと思いますが、目的とやり方を詳しく理解しているとさらに効果が高まり改善も早くみられると思います。 ご自身の現状と必要な治療を理解し、少しでも効率的にリハビリが行えるよう役立てていただけたらと思います。


著者:いきいき100歳応援中(理学療法士)
専門:整形外科疾患、介護予防分野

自己紹介
二児の母でもある理学療法士。整形外科疾患、介護予防分野を専門とし、病院勤務の傍ら健康や医療に関する記事を執筆している。

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