伝統工芸

ご存知ですか?「奥州市南部鉄器」と「盛岡市南部鉄器」の違い

2018-08-03

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昔ながらの技術を今に伝える伝統的工芸品の中には陶磁器などの焼き物、タンスやこけしのような木製製品の他に「鉄器」も存在します。
そこでここでは東北地方に伝わる「南部鉄器」について紹介していきたいと思います。

1、南部鉄器の歴史

現在「南部鉄器」と総称されているものは実は二通りが存在します。それは「奥州市南部鉄器」と「盛岡市南部鉄器」です。それぞれに始まりや歩んできた歴史が違うために分けて説明していきます。

「奥州市南部鉄器」

平安時代の終わりごろ、東北地方に一大帝国を築いていた奥州藤原氏の藤原清衡が京の近く、近江国から鋳物師を呼んで始めたとされています。これはこの地に北上山地の砂鉄や砂、粘土など鋳物を行うための良質な材料が豊富にとれたということが大きく影響しています。

雇い主である藤原清衡が奥州平泉に移ると鋳物師たちも移っていきます。ここで中尊寺に使われる道具や部品を鋳造したりしていましたが、奥州藤原氏が滅亡してからは鍋などの日用品を製造していました。

その後、奥州総代奉行である葛西氏の保護を受けたのち、江戸時代には仙台藩の保護を受けてこの地で日用品を中心に製造を行っていくようになりました。江戸時代末期から明治時代ごろには大砲を製造したり仏具など様々なものを作り出していきます。

「盛岡市南部鉄器」

こちらは奥州市の南部鉄器と比べるとかなり歴史は遅れてはじまっています。戦国時代も終わりごろ、江戸時代初期に盛岡藩藩主である南部氏の保護を受けて広がっていったものです。盛岡藩の鋳物に関しては4つの家が請け負っていました。そのため盛岡市の南部鉄器の歴史とは「有坂家」「鈴木家」「藤田家」「小泉家」の4つの家の歴史でもあると言えます。

特徴としては有坂家は日用品を中心に鉄器全般を、鈴木家は梵鐘や燈籠など寺院や神社などで使用される大物を作ることが多く、藤田家は鉄鍋や鉄瓶などの日用品を、小泉家は茶釜などの茶道具を作ることが多かったようです。

 このようにどちらの南部鉄器も仙台藩、盛岡藩の保護を受けて成長してきましたが、江戸時代が終わり明治の時代に入ると一時的に衰えます。しかし生産体制が整い、奥州市、盛岡市の両方を通る東北本線が開通するとさらに生産を拡大させていくことになりました。その後、戦時中は生産を著しく制限されていきます。さらにアルミなどの新しい素材が注目されるようになっていきますが、南部鉄器はそのデザイン性と有用性、耐久性が評価されて存続していきます。現在では伝統的工芸品として国内で評価されるだけではなく、海外でも高い評価を受けているのです。

2、南部鉄器ができるまで

南部鉄器は鉄瓶や鉄鍋など様々な製品がありますが、基本的には同じ流れになります。まずは図面です。どのような仕上がりにするかのデザインを決めていきます。この時、全体の形や飾り、模様など細部まで決定していきます。そしてこの図面の断面の半分を「木型」と呼ばれる型にはめます。製造するものによってこの木型は必要になる数が変わってきます。そしてこれを回転させることで鋳型を作っていきます。

またこれとは別に先ほどの木型よりも小さいものを作っておきます。これは鉄瓶などを中部分を空洞にするために使用します。

そして「実型」とよばれる外枠に粘土、砂などをいれて木型を入れ回転させます。この工程のことを「型挽き」と言います。完全に乾燥するまえに模様や文様を入れていきます。

その後、型を乾燥させて焼き、銑鉄を流し込みます。そして型から作品を取り出して木炭で焼き、磁性酸化被膜をつけます。約900℃の温度で焼くのですが、これは南部鉄器特有の技法で「金気止め」と呼ばれ、鉄器をさびにくくする作用があります。

最後に細部の調整を加えて検査を行えば完成となります。

3、南部鉄器のいま

現在でも焼型、乾燥型の鋳型作り、紋様押し、肌打ち、漆仕上げといった伝統的技法が続けられており、南部鉄器は「丈夫で長持ち」と評価され続けています。

南部鉄器は戦後、奥州・水沢方面のものと、盛岡・花巻方面のものが合流することになります。盛岡の方では1949年に「南部鉄瓶商工業協同組合」が設立し、奥州の方では1954年に「水沢鋳物工業協同組合」が設立されます。

そしてさらなる発展を望んで1959年には「岩手県南部鉄器協同組合連合会」が設立されることになります。ここから南部鉄器はさらに製造・販売を拡大させていきます。

1975年に第一次の選抜で「伝統的工芸品」として認定され、現在につながっています。

現在も「岩手県南部鉄器協同組合連合会」が産地組合として運営管理を行っています。ここでは、昔ながらの南部鉄器の伝統技法を守った茶の湯釜や鉄瓶の制作を行うと同時に、現在の生活にあった食器や調理器具などの制作、さらには海外向けの製品の開発や製造、輸出などを行っています。さらにここを訪れた観光客への「南部鉄器製造体験」や製造された作品の直売、広報などのPRもすべてまかなわれています。

岩手県南部鉄器協同組合連合会
〒020-0055
岩手県盛岡市繋字尾入野64-102
盛岡手づくり村内
TEL:019-689-2336
FAX:019-689-2337

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