景勝地

仙人も酔いしれる絶景、仙酔島

2018-08-08

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仙酔島がある鞆の浦

広島県福山市街南西の水呑から阿伏兎岬に至る沼隈半島東岸の断層崖と、その東側に浮かぶ仙酔島、ツツジ島、皇后島、弁天島、玉津島、津軽島などを含めた地域を鞆の浦と詠んでいます。紺碧の海に、アカマツやウバメガシにおおわれた島々を配した風景は瀬戸内海のなかでもとりわけ美しく、一帯が「鞆公園」として国の名勝に指定されています。

中心の鞆は古くからひらけた港町で、「魏志倭人伝」の投馬国とする説や、神功皇后が三韓征伐の際に立ち寄ったという伝説があります。また、大伴旅人がこの地で、
吾妹子が見し鞆の浦のむろ木は 常世にあれど見し人ぞなき
と詠んだ歌が「万葉集」に記されています。その後、平安・鎌倉時代には内海航路の重要な港であったことが推察されます。

室町時代には、対外貿易の基地としても繁栄し、遣明船の中には鞆宮丸といった名も残っており、江戸時代、鞆港に寄港した朝鮮の国使である李邦彦は、ここの風景を「日東第一形勝」と言って称賛しました。

明治以後、陸上交通の発達によって少し衰えは見せましたが、現在でも四国多度津港との間に大型フェリーを就航させ、観光地として栄えています。毎年4月下旬から5月下旬にかけて周辺の海域で行われる鯛網はここの名物となっており、海岸べりにびっしりと低い家並みを広げる鞆の街も昔ながらの情緒を残しています。
沼名前神社や安国寺、天蓋マツなど古い歴史にいろどられた見どころも多く、街の背後に盛り上がった後山は鞆の浦の全景を眺める展望所となっています。

山紫水明の島、仙酔島

鞆港のすぐ前に横たわる島で、周囲5.2km、面積が0.92平方キロメートル。全島が瀬戸内海国立公園の指定区域に含まれています。

島内には、田の浦・彦浦の両海水浴場と海抜159mの大弥山を結ぶ遊歩道があり、軽いハイキングが楽しめ、秋にはマツタケ狩りもできます。大弥山の山頂からは鞆の浦の景勝が一望でき、その素晴らしさは仙人をも酔わせるということからこの島の名前がつけられたとされています。

島の全域にわたって松がうっそうと枝を張り、周囲にはコウモリ岩、猿渡などと名付けられた奇岩、大小無数の海食洞窟・洞門、離れ島が散在しており、海の青・松の緑と相まって見事な景勝を形づくっています。

また、田の浦から彦浦に出る海岸道路沿いをはじめ、島内各所に頁岩・砂岩・礫岩などが一枚岩のようになった堆積岩の岩脈が見られ、海食洞窟とともに仙酔島が形成された過程を示す貴重な地質学的資料として県の天然記念物に指定されています。

春や秋は一日の清遊を楽しむことができ、夏は田の浦・彦浦での海水浴や遊覧船での島めぐりができます。

仙酔島の付近の名所

鞆の浦と仙酔島の間に浮かぶ小島が弁天島です。例年5月中旬に鞆の浦観光祭花火大会が催されます。島全体が五色のイルミネーションで夜空に浮かび上がり、打ち上げ花火が海を照らし出す光景は素晴らしく、毎年数万人の観光客を集めています。

島には、もこし付き・朱塗りの小堂と九重石塔がありますが、基礎に金剛界四仏の種字と「文永8(1273)年6月15日」の銘が刻まれた九重石塔は、県の重要文化財に指定されています。その高さは3.71mで、花崗岩でできており、もともとは十一重であったらしく、四重の上部が不自然になっています。

走島は鞆の浦の南約3kmの海上に浮かぶ小島で、20種約7万本におよぶ熱帯植物園があり、バナナ・パパイヤ・マンゴーなどの果樹も栽培されています。

周辺の海は鯛をはじめ、アナゴ・タチウオなどの絶好の釣り場となっており、旅館や釣り船の設備も整っています。

鞆の浦には南北時代の初めごろに足利尊氏が戦没者の冥福を祈って全国に建立した安国寺の一つがあります。この備後安国寺は鎌倉時代に建立され、衰退していた金宝寺という寺を愚谷和尚が再建し、師である法燈国師を開山に仰いだと伝えられています。

のちに一時荒廃しましたが、天正7(1579)年に大修理が施され、庭園なども整備されました。この庭園は現存しており、中国路最古の枯山水といわれ、桃山風の石組を見ることができます。境内全域が備後安国寺跡として県の指定史跡になっています。

安国寺南方、日蓮宗法宣寺の境内にあるクロマツの大樹が天蓋マツです。国指定の天然記念物で、胸高幹囲は3.9mありますが、樹高が5.4mしかなく地上1.6mのところから枝分かれしており、四方に伸び広がっています。

沼名前神社は備後国風土記にみえる疫隈の国の社を指します。社歴は古く、仲哀天皇の治世に神功皇后が三韓征伐のために西国にくだったときに鞆の浦に船を寄せて海路の安全を祈って大綿津見命を奉祀したのがはじまりとされています。

近世では福山藩主水野氏の崇敬社として栄え、今の権現造りの社殿は1648年の水野勝成の建立によるものとされています。社前の大鳥居が県指定の重要文化財に、能舞台が国の重要文化財にそれぞれ指定されています。鳥居は高さが5.47mで、笠木の端に鳥襖形をのせた珍しい形式が取り入れられています。
能舞台はすべてが組み立て式で屋根もパネル式になっており、移動可能な初期型能舞台の形を残しています。

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