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高齢者のむせはお口の老化!原因と予防法は?

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はじめに

年齢を重ねると足腰の筋力や体力、内臓機能などさまざまな部位に衰えが生じますが、その一つに口腔機能の低下(口の周りの機能低下)があります。
軽度の場合は意識しないとなかなか感じることがありませんが、活舌が悪くなる、食べこぼしが増える、硬い食べ物が苦手になる、むせることが増えるなどがその一部です。
しっかり食べることは健康の源でもあり、日常生活にさほど支障がないとしてもそういった口腔機能の低下を見逃すと後々健康を大きく害することになりますので、少しでも早くお口の老化をくい止める必要があります。
そこで今回は、飲み込みの仕組みと口腔機能を保ってむせなく健康に食事を続けるためにはどうすればよいのかということをご紹介していきます。

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飲み込みと「むせ」の仕組み

私たちの身体には、食べ物や飲み物を胃に送るための「食道」と口や鼻から入った空気を肺に送るための「気管」があり、のどから前後に並んで下っています。
通常食べ物を飲みこむときには、気管に食べ物が入らない様に喉頭蓋が気管にふたをし(0.5〜0.7秒程度)、その間に舌や頬から圧力をかけて一気に食べ物を食道まで運びます。
正常な口腔機能が備わっている人はこの一連の流れを無意識に行うことができますが、口腔機能が低下している高齢者は食べ物を食道に運ぶ勢いがないので喉頭蓋が気管にふたをしている間に間に合わず気管の方に入ってしまうことがあります。
それを「誤嚥(ごえん)」といいますが、誤嚥すると人間の身体は反射的に気管に入った食べ物を排除しようとしてむせる「咳嗽反射(がいそうはんしゃ)」が起きます。
肺に食べ物や飲み物が入ったままになってしまうと雑菌が肺で繁殖して肺炎になってしまうので、咳嗽反射が起きるのは大切な反応ではありますが、食事の度に頻繁にむせると食事の時間が苦痛になってしまい食欲自体がなくなってしまいます。

「むせ」の原因は?

口腔機能が低下すると誤嚥やむせが起きるとお伝えしましたが、具体的にはどのような機能が低下するのかご紹介します。

■舌や頬の筋力の低下
食べ物を飲みこむときには舌や頬から一気に圧力をかけて食べ物を食道に送り込むので、口の中で舌を動かしたり頬をすぼめたりするための筋肉がしっかりと働くことが必要です。
硬いものを噛んだり、笑ったり怒ったりと表情を変えたり、大きな口をあけて話したりすることが少ないと徐々にそれらの筋力が低下してしまいます。

■唇をとじる力の低下
私たちは食べ物を飲みこむときに自然に唇を閉じます。
唇を閉じることは食べ物を食道に送るために舌や頬で圧をかけるのと同じ働きをします。
ただ上唇と下唇をくっつけるだけでなく、口を真一文字に結んで強く閉じる力が必要であり、主に唇の周りにある口輪筋がその役割をしますが、はっきりと口を動かして話すことが少ないと機能が低下してしまいます。

■唾液量の低下
唾液は口の中の食べ物をまとめて塊にし、食道を通しやすくするための潤滑油のような役割をします。
更年期障害や糖尿病などの疾患、薬の副作用でも唾液量は低下してしまいますが、噛んだり話すことが少なかったり、体内の水分が不足するなど日常生活習慣によっても唾液量が低下することがあります。
唾液量が減るとスムーズに飲み込みにくくなり、むせの原因になります。

■認知機能の低下
私たちは口の中に入っている食べものの形や固さ、食感、味など様々な情報を脳で認知し、その情報に基づいて噛み続けたり飲み込む準備を始めたりします。
認知機能が低下すると、まだ食べ物が大きいまま飲み込もうとしてしまったり、飲み込みやすい食塊がうまく作れなかったりするため、むせの原因となります。

こういった機能が低下することでむせることが増えると、食欲が低下して栄養失調になったり、体重の減少につながります。
また、肉や魚などの動物性たんぱく質は食材の中でも噛む力や飲みこむ力を要する食べ物なので、そういったものが食べにくくなることでたんぱく質の摂取量が低下すると筋肉量が低下して転倒や活動性の低下にもつながってしまいます。

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「むせ」を予防するためには?

むせを予防するために普段から気を付けておきたいことをご紹介します。

■口の周りの筋肉を鍛える
むせを予防するためには、口や舌、頬の筋肉の機能をしっかりと保つ必要があり、そのためには筋肉を日頃からしっかりと使う必要があります。
滑舌よくはっきりと話したり大声で笑うこと、硬い物を食べることで自然に口の周りの筋肉が鍛えられて機能を維持することができます。
また、すでに口の周りの機能低下を感じている方は積極的にこのあとご紹介する口腔体操を行って、機能を少しでも取り戻すよう働きかけてみてください。

■歯の健康を保つ
しっかりと食べ物を噛める歯や歯茎が備わっていて初めて毎日の食事でしっかり噛むことができるので、歯や歯茎の健康を保つことはとても重要です。
高齢者の場合は全て自分の歯であることは難しい場合が多いですが、自分の歯に限らずきちんと自分に合った義歯(入れ歯)を作成して装着することで同じレベルの口腔機能を保つことができますので歯を失った場合はきちんと治療をすることが大切です。
また、しっかりと噛むことで脳への刺激となり認知機能の低下を予防することができるのでそういった点においてもむせの予防につながります。

■しっかり身体を動かす
日頃からしっかりと身体を動かすと、息が上がったり、歯を食いしばって手や足に力をいれたりと口の周りの筋肉を使われることが多くなります。
またしっかりと活動することで脳も活発になり、むせの予防につながります。

■社会と関わりを持つ
家に閉じこもっていると人と話す機会やいつもと違うものを食べたり飲んだりする機会が減ってしまいます。
他者と話したり家では食べないような味や食感のものを食べることでいつもは使わないような口の周りの筋肉を使ったり、脳が刺激を受けて活性化します。

「むせ」の予防におすすめの体操4選

むせの予防におすすめの航空体操をご紹介します。

■発声体操
大きくはっきりと口を開け、大きな声をだしましょう。
あー:大きく丸く口を開けます。
んー:上下の唇を強く結び、口の周りに力を入れます。
いー:上下の歯をくっつけて口を横に広く開けます。
うー:口をすぼめ、前に突き出すようにします。
えー:口の両端を上げるように口を横に大きく開けます。

■舌の体操
舌を大きく力強く動かす練習をします。
べー:できるだけ長く舌を出し、舌のつけ根に力が入るようにします。
上:舌の先を自分の鼻につけるようにできる限り上に持ち上げます。
下:舌の先を顎につけるようにできる限り下に下げます。
口角:舌をできるだけ横に伸ばします。左右とも行います。
回す:口を閉じて舌を口の中で大きく回します。時計回りと反時計回りどちらも行います。

■頬の体操
頬の周りの筋肉を鍛えます。
口を思いきり膨らませては両頬を吸ってすぼめるという動きを繰り返し行います。

■パタカラ体操
飲み込みで必要な舌や口の機能を練習する体操です。
大きな口の動きではっきりと、歯切れよく発声しましょう。
パ:発声前に口を閉じて発声とともに唇をはじきます。
タ:舌を上あごにつけ、舌の先の力を鍛えます。
カ:舌の奥を閉鎖します。
ラ:舌が口の中で一度丸まります。
一つの文字だけを早口で繰り返したり(5秒で30回言えることが目安)、「パタカラ」をつなげて速く言う練習をします。

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おわりに

今回は、高齢になると増える「むせ」についてその仕組みや原因とともにおすすめの予防体操もご紹介しました。
手足や脳の機能低下に比べて口の機能は意識されることが少なく、いつの間にか食事が難しくなっているということも多々あります。
食事が健康の源であり、口の健康は全身の健康のためにとても重要なので今回をきっかけにご自身の口の状況に目を向けていただき、是非口腔機能の低下を予防して下さい。

■プロフィール

監修:いきいき100歳応援中(理学療法士)
専門:整形外科疾患、介護予防分野

自己紹介
二児の母でもある理学療法士。整形外科疾患、介護予防分野を専門とし、病院勤務の傍ら健康や医療に関する記事を執筆している。

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